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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

闇に蠢く

江戸川乱歩  1926年

嗚呼おぞましい、乱歩流グログロの極致

 乱歩を読むなら創元推理文庫、というのはファンなら常識というものですが、なにしろ創元は出るのが遅く、いまだ収録されていない作品も数多くあります。この「闇に蠢く」を収録している文庫で、現在、容易に入手できるものは、春陽堂の江戸川乱歩文庫『暗黒星 他一編』だけというのは、お寒い限りです。講談社江戸川乱歩推理文庫B『湖畔亭事件』にも収録されていたけれど、この文庫全集は既に絶版になっています。講談社の文庫全集は少年ものも含めて全作品を収録した65巻、おまけに特別補巻として『貼雑年譜』まで揃えた驚異のシリーズで、内容と関係なさげで賛否両論のあった表紙画は天野喜孝が描いていました。でも、活字が大きすぎて、読みやすいのはいいけれど、健全で乱歩っぽくないのが難点でした。その点、春陽文庫はいかがわしい雰囲気が漂っていてステキなのですが、活字が悪くて読みにくく、おまけに解説もついていないという不親切な作りが許せません。新しく解説を付けられないのなら、せめて乱歩自身による「自註自解」くらい付しておけばいいのに。というわけで、やっぱり創元推理文庫に頑張ってほしいのです。物真似得意の光文社文庫版との兼ね合いがあるのかもしれないけれど、あんな無茶苦茶な編集(どんな脳みそを持っていたら、『怪人二十面相』と『大暗室』のカップリングなんて発想が出てくるのだろう?)のくそシリーズなんか堂々と無視して、老舗の風格あふれるシリーズを再開してほしい。私が特に早く出してほしいなぁと思っているのが『白髪鬼』とこれ。『人間豹』を出すくらいなら、これを出さないって法はないでしょう、東京創元社さん。とにかくグログロでゲロゲロな酷い作品(褒めています)で最高です。

 女性の体全体の美に異様なまでに執着するド変態ボーイ野崎三郎は、ある日友人の紹介により理想の肉体をもつ踊り子お蝶に出会い、すっかりお蝶(の身体)の虜となった野崎は、二人で暮らすようになる。そんなある日、お蝶が何かに怯えるように駆け落ちを提案する。不思議に思いつつも、最愛のお蝶(の身体)を思い、野崎が以前行ったことのある人里離れた籾山ホテルへと身を寄せたが、沼の畔でお蝶が姿を消してしまう。友人の植村喜八とともに、お蝶の失踪の真実を探る野崎だが、何者かによって洞窟に閉じ込められてしまう。そして、犯人かと思っていた謎の男、進藤までが二人のいる洞窟に監禁される……。

 あぁ、この後、話はトンデモナイ方向に向かって突っ走るのでありました。乱歩のグロも行き着くところまで行ってしまった感のある展開。作中に流れる血の量は、たぶん乱歩作品中最大と思われ、しかも流れ方の酷さたるや、これが本当の出血大サービス。おまけにラストの毒々しくも神々しい美しさときたら、乱歩以外には書けないシーンです。こんな作品が好きだと公言すると、変態扱いされるのは間違いありませんが、この世の外の極限美を体験したい方は、迷わず入手しましょう。



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