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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

吹替映画大事典

とり・みき&吹替愛好会  1995年

とかなんとか言っちゃったりなんかしちゃったりなんかして

 アラン・ドロンは野沢那智、オードリー・ヘップバーンは池田昌子、マリリン・モンローは向井真理子で見たい。いまさら字幕なんかで観たくないと少しでも思っている吹替ファンに捧げる日本初吹替映画研究本。著名な吹替声優20名へのアンケート、これまでにテレビ放送された外国映画、いわゆるテレビ洋画の配役情報、吹替翻訳家の額田やえ子インタビュー、広川太一郎に関するエッセイ、著名人による吹替についての分析などがてんこもりである。

 洋画を映画館へ見に行くなんてブルジョワ・チルドレンではなかったので、テレビから流れてくる吹替は、特に意識もせずに聞いていたのですが、その素晴らしさを改めて認識したのは、ビデオで名画を借りまくった後でした。ビデオには吹替なんか入っていなかったので、世間で名画と呼ばれるものを見ていても大して面白くもなく、どうしてもアクションものに走りがちだったのですが、確かNHKで放送した『マイ・フェア・レディ』を見て、認識が変わりました。田舎娘がレディになっていく、『プリティ・ウーマン』の元ネタですが、主役の娘の話し方が変な方言から洗練された言葉遣いに変わっていくさまは、当然ながら吹替の方が分かりやすく、メーテルことお蝶夫人ことオードリー・ヘップバーンの池田昌子の見事な演技で、映画を堪能できたのです。これを見て以来、熱心に吹替ものを見るようになったのです。特に感動したのは『十二人の怒れる男』。字幕では退屈で全然面白くなかったのに、吹替で見たら迫力が大違い。英語を自在に扱えるような帰国子女でもなんでもない私は、吹替版がなかったら、名画を楽しむことはできなかったでしょう。

 著者である、とり・みきは、映画秘宝で「広川太一郎主義!」というコラムを書いていたくらいで、本書でも広川太一郎のフィーチャーぶりがすごい。ロジャー・ムーアの007映画(ジョージ・レーゼンビーもあてていた)でおなじみの二枚目さんだと思っていたら、『Mr.Boo!』でマイケル・ホイを異常なテンションで吹き替え、ムーアとホイが共演した『キャノンボール』では両者を見事に吹き替え分けるという神業を披露、『ローマの休日』では理髪師を勝手にオカマ演技にする(別の人が吹き替えたのを見たら、普通にしゃべっていたので驚いた記憶がある)など、吹替によって、オリジナル作品を超える面白さを味わえることを教えてくれました。最近ではジャッキー・チェンの石丸博也かスティーブン・セガールの大塚明夫以外にはフィックス声優というものにも出会えず、また、録音技術が良くなったのか何なのかBGMだのSEだのばかり音が大きくて台詞が聞き取りにくいということもあって、いきおい字幕版を借りてしまいますが、今一度、製作者の皆様方には吹替版の素晴らしさを認識していただきたい。話題性だけを狙った吹替は排除して、安心して楽しめる吹替版づくりとともに、古の名吹替の復刻も進めてほしいと願う今日この頃であります。


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