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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

0の殺人

我孫子武丸  1989年

あなたが考慮すべき容疑者達は、四人だけということになります

 いわゆる新本格第一世代である我孫子武丸の初期のシリーズもの、速水三兄弟シリーズからの御紹介です。我孫子は、最近でこそ作風に広がりを見せているものの、デビュー当初は、この速水三兄弟シリーズや、『人形はこたつで推理する』に始まる人形シリーズなど、コミカルな味が特徴でした。中でもコレが一番ビックリの面白さ。

 たった4人しか肉親がいなくなってしまった家族が1人ずつ消えていく。まず1人目がコーヒーに混入された青酸カリによって毒死してしまった。そして次の犠牲者は……。物語の冒頭に、たった4人の容疑者リストと「作者からの注意」が置かれています。曰く「あなたが考慮すべき容疑者達は、四人だけということになります。しかも、物語が進むに従って容疑者達は減っていくことになるから、範囲はさらに限定されます。極めて簡単な問題ですからほとんどの人は、終幕前に真相を見破られることでしょう―――ほとんどの人は。でも、百人に一人くらいは分からない人もいるのではないでしょうか。」……というわけで、この大胆かつ破天荒な作者の挑戦に、果たしてあなたは犯人を突きとめられるか?という趣向で、文句なくオススメです。

 綾辻行人の登場に始まる新本格ムーブメントは、その動き自体は推理小説読者を喜ばせましたが、正直言って、個々の作品については、私を失望させました。特に講談社デビュー組である綾辻、歌野晶午、法月綸太郎のデビュー作は、どれもこれもつまらない出来で失望しました。世間では「人間が描けていない」だの「小説ではなく、ただのパズル」だのと批判されていましたが、ごく単純に面白くなかったんですよ。綾辻は、ある意味拍子抜けの真相、法月は何を書いているのかサッパリ分からず、歌野は落書きレベル。一番酷かったのは歌野で、この人がマトモな作品を書けるようになるには、更に何年もの時間が必要なのでありました。で、我孫子のデビュー作『8の殺人』もまた大した出来ではなかったのですが、他の作家と違って、コミカルな雰囲気で読みやすかったのが一抜けの高評価でした。そして、あまり期待せずに読んだ2作目が、こんなに面白い出来だとは!タイトルも実に洒落ていて秀逸です。綾辻も2作目『水車館の殺人』が大傑作だったので、デビュー作だけで投げ捨ててはいけないということを、改めて実感しましたねぇ。

 続く第3弾『メビウスの殺人』も、なかなか面白い趣向でしたが、『特捜最前線』の「東京、殺人ゲーム地図!」(脚本は長坂秀佳)のパクリとしか思えなかった私が可哀想。ちなみに、その「東京、殺人ゲーム地図!」にも、『鬼警部アイアンサイド』の「奇妙な二人組」という元ネタがあるのは言わない約束。この人は器用な人だと思うので、この先も淡々と作品を発表していくことでしょう。ただ、探偵小説研究会編・著の『本格ミステリ・ベスト10』への寄稿は鼻につきますな。もっと千街晶之を見習ったらどうか('99年版「このミステリーがすごい!」参照のこと)。



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