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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

本格ミステリ・ベスト100

[編・著]探偵小説研究会  1997年発行

いくら「基本的には恣意的なものでしかない」とはいえ……

 1975年の赤川次郎や『幻影城』作家から、1994年の京極夏彦の登場まで、かつてない本格派興隆期20年間の作品から100冊を選び出し、新時代を俯瞰するガイドブック。

 対象は、日本の作品だけです。この後、毎年発表されるようになり、「このミステリーがすごい!」と泥仕合を演じるようになったのは周知のとおり。この泥仕合が面白いんですけど(もっともっと醜く続けてほしかったんですけどね、野次馬の私としては)、それはまた別の話。笠井潔率いる探偵小説研究会が作ったので、いささかセレクトに偏りがある気がしますが、それはまぁ知られざる作品にも光を当てた、ということで良しとしましょう。ただ、何を基準に選んだのか、探偵小説研究会による「本格」の定義は何なのかを示していないのは疑問です。会員それぞれに「本格観」があるというのも分からんではないけれど、それでは会としてガイドブックを出すという行為と整合性がつかないのではないか。烏合の衆じゃないんだったら、各人の主張を踏まえた上で、会としては、「こういうものを「本格」と定義し、こういうルールによってランキングした」と明記すべきではないだろうか。

 それと、解説文が分かりにくいのもナントカしてほしいぞ。わざと分かりにくく書いているのか分かりやすく書く能力が無いのか知らないけれど、レビューってのはドシロウトの皆様を対象にしているんですからね。評論だから内容が少々難しくなるのは仕方ないかも知れませんが、文章はあくまでも分かりやすくなくちゃ。探偵小説研究会は、都筑道夫の『黄色い部屋はいかに改装されたか?』をテキストに使って勉強会をしているって何かで読んだ覚えがあるのだが違ったかしら。あの本には「小説は難しく書いてもいいが、評論はそれじゃダメ」と書いてあったと思うのだが、そこは受け継がないのか。いや、それにしても笠井の評論は難解すぎるな。本人も分かって書いているのだろうか?とにかく、そんな師匠の真似はしなくていいから、若手の皆様は、もっと分かりやすい文章を書くように精進してほしいものである。でないと、ミステリ界は一部マニアが寄り集まって楽しんでいるだけの特殊部落になってしまうぞ。それはそれでもいいという意見もあるでしょうが、少なくともレビューを書こうなんて人たちはそうではないはずだ。「俺はこんなに難しいことを知ってるんだぞ」なんて、みっともない自慢はやめて、サルでもすいすい読めるような文章を心がけていただきたい。難しいことを簡単に説明できる人が、本当に頭の良い人なんだから。


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