本文へスキップ

ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ル・シネマ

宇野亜喜良  1992年

いやぁ、宇野亜喜良の画集って、本当に素晴らしいもんですね

 天才・宇野亜喜良が映画を題材に描いたものを集めた画集。宇野は、昭和期の日本を代表する挿絵画家・グラフィックデザイナーの一人。ペンなどによって描写された人物などが特徴とされる。父親が室内装飾業を営んでおり、その影響で幼いころから絵を描き始め、画家の宮脇晴に師事。高校卒業後、カルピス食品工業に入社、同社の広告・宣伝に携わる。その後亀倉雄策らが設立に参加した日本デザインセンターに入社、同社を退社後は、同世代を代表するイラストレーター・グラフィックデザイナーの横尾忠則、和田誠、山口はるみ、灘本唯人などとともに東京イラストレーターズ・クラブを設立する(1965年)。また、寺山修司の『天井桟敷』に横尾などとポスターの制作等を手がけ時代の寵児となった。イラストレーター以外にもキュレーター(学芸員の姉さんみたいなもんですかね)や舞台美術、芸術監督等も務めている。ちなみに、署名は「Aquirax」で、「アキラ」のフランス語風の表記。

 宇野は、なんというかサイケな感じの絵も描くんですが、私としては、色鉛筆とか極細のペン(ロットリング)とかで描いた、線の細い、儚げなタッチのものが好みです。こういう技法を何と言うのかは知りませんが、とにかく美しい。手元に置いておいて損のない傑作画集です。おまけに名画を題材にしているので、部屋にいながらにして名画座の雰囲気も味わえるという、とてもお得な画集なのです。

 ところで、表紙はイングリッド・バーグマンですね、『カサブランカ』ですよ、「君の瞳に乾杯」ですよ、「AS TIME GOES BY」ですよ。ラストシーン、あの警察署長はおいしかったねぇ、とかなんとか、まぁ、こんなふうに映画のシーンを思い出しながら画集を楽しむわけなんですが、逆に言うと、いわゆる名画と呼ばれるような、ちょっと古めの映画が題材になっているがために、この画集をとことん楽しむためには、それなりに映画の知識がないとダメだということになります。もちろん絵を見ているだけでも十分楽しめるんですが、やっぱり映画は見ておきたいですねぇ。少なくとも、『カサブランカ』くらいは見ておかなきゃいけませんね。題材になっている作品では、他にも『太陽がいっぱい』『現金(「げんなま」と読む)に手を出すな』『勝手にしやがれ』くらいは見ておくべきだと思います。古い映画を見ているからって別に偉いわけでもなんでもないですし、今とは比べ物にならないチャチな技術やのろいテンポに辟易して退屈の欠伸が出るかも知れませんが、いわゆる「名画」というものがどういうものか、知っておくのも良いでしょう。それに、昔の映画には、なんというか独特の雰囲気、「映画館(シネコンではない)で見る映画」って感じの雰囲気があって、今の映画とは替え難い魅力になっています。