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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

終わりなき日常を生きろ オウム完全克服マニュアル

宮台真司  1995年

「終わりなき日常」の呪縛から自由になれるのか?

 オウムに入るほど純粋無垢のおばかさんじゃないつもりだけど、なんとなく毎日が楽しくなくて、それなりに頑張って生きてはいるつもりだけれど、何か報われたという記憶があるわけでもなく、何か面白いことないかなぁとか考えながら毎日を生きています。でも面白いことなんか、そうそうあるはずもなく、大金が落ちているわけでも、女にモテるわけでもなく、よく考えてみれば、今すぐ死んでも大して困ることなんかないよなぁとか思ったりして、じゃあ、俺は何のために生きているのだろうなんて、石川啄木みたいにじっと手を見たりするわけです。そんな時、この本のタイトルが目に飛び込んできたんですね。

 「さまよえる良心」と「終わらない日常」をキーワードに現代を読み解く。「終わらない日常」を生きるとは、何が良いのか悪いのか自明でない世界を生きることだ。混濁した世界の中で生きる知恵が、今必要とされている……。宮台真司の、おそらくは思想家としてのピークに書かれた最高傑作。最近では、その思想が難しくなりすぎたのか、文章が下手なのか何を言うてるのか訳分からんようになってきているけれど、この本は読みやすくて良いです。

 「終わらない日常」……これだ。私を悩ませているのはこれなのだよ。毎日決まった時間に出勤して、楽しくも何ともない仕事をこなして、退社したら夜の街にも繰り出さずにまっすぐ帰宅して、晩飯食って風呂入ったら後は寝るだけ……これが毎日続くんだね。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』みたいに楽しい日常が続くのなら、まだ救いがあるけれど、苦しみ、悩み、もがくことが、生きることと同義なら、そんなにしてまで生きなければならない理由はなんだろう。そんなにしてまで生きた果てに何が待つというのだろう。刹那的な快楽に身を任せられない性格の人間は、どうすればいいのだろう。「終わらない日常」などという考え方そのものが甘えでしかないという批判や、昨日と同じ今日が来て、今日と同じ明日が来るということが奇跡的なことであり、どれだけありがたいことだと思っているのだというお叱りもいくつか読んだけれど、甘えだろうがなんだろうが、本人がそう感じてしまっているのだから仕方がない。一度、この考えに囚われてしまったら、限りなく無気力になって、なんでもないことにイライラして、ちょっとやそっとで脱け出せるものじゃない。宮台が示した「終わらない日常を生き抜く知恵」だって簡単に身に着けられるものじゃない(そんなことができる人は、そもそも悩んだりしない)。私は、この本を読んだことで、ちょっとだけ救われましたが(知恵を身に着けられたからではなく、そういう考え方もあるのだ、と知ったので)、根本的には何も解決せず、今日もなんとなく生きています。


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