本文へスキップ

ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義

佐藤健志  1992年

「愛と正義」の謎を解く

 ヤマトの「宇宙愛」とは何か、タエ子の「農村」とは何か、ゴジラの「復活」とは何か、ウルトラセブンの「明けの明星」とは何か、アリオンの「革命」とは何か……ゴジラ、ヤマト、ナウシカから東京ラブストーリーまで、娯楽作品に無意識に込められた戦後民主主義の思想を追い80年代の日本を総括する。

 私としては誰もが誉めている『風の谷のナウシカ』を貶してくれているところで拍手喝采、ちあきなおみだったものです。何回も言うようで恐縮ですが、あんな駄作は他にはありません。登場人物はアホばっかり、だから、やっていることもストーリー展開も無茶苦茶、どこをどうしたら「日本アニメの金字塔」などという評価を受けるのか分からない。今では日本を代表する映画監督として祀り上げられている宮崎駿ですが、『天空の城ラピュタ』なんかを見ていると、妙な思想に走らず、とにかく動きに動きまくっているような作品の方が良いのではないか。テレビ時代が長かったから、長編を支えるのは苦手なんじゃないかと思えて仕方がない。それはさておき、ナウシカが、どうしてあのような作品になってしまったのか、という点について鋭くメスを入れてくれています。

 このほか、『宇宙戦艦ヤマト』『おもひでぽろぽろ』の欺瞞を暴き、特撮ものに込められた甘えを断罪し、好きな人から「何もそこまで言わなくても」と悲鳴が上がるような名著に仕上がっています。特に『おもひでぽろぽろ』については、同情の余地なしといった感じで攻撃していて爽快です。最も読みごたえがあるのは、戦後民主主義のクライマックスである全共闘運動に関わる部分。私は東大安田講堂事件のあった1969年生まれなので、当然体験していないわけですが、街中に道路の敷石が飛び交い、学生と機動隊が衝突するとか、角棒振り回して内ゲバ殺人とか、およそ今からは想像できない光景が日本にあったのです。学校の歴史の授業は、縄文式土器だの入鹿と蝦夷だのから始まって、年度末に前島密なんて名前が出てくるのがせいぜいで、激動の昭和なんて欠片も教えてくれない。というわけで、その時代のおさらいからしてくれているのですが、これが実に要領よくまとめられていて分かりやすい。ここを読むだけでも値打ちものです。そして、『アリオン』などを通して暴かれる団塊の世代の馬鹿さ加減。この世代は、会社やなんかでトップレベルに君臨し、現代日本を作り上げ、支配している層ですが、本書を読めば、こいつらに対する怒りと憎しみが際限なく増幅されます。この上年金をもらって長生きしようというのですから、後続世代にどれだけ負担をかければ気が済むのだと殺意すら湧いてきます。ああ腹が立つ。でも,なんとかしなくちゃ。なんとかしなくちゃ。


メニュー

  1. トップページ
  2. 特選名曲
  3. 特選名著
  4. 特選名画
  5. ヴァイブの殿堂
  6. PROFILE
  7. BLOG
  8. BBS
  9. LINK

おすすめ情報