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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

童夢

大友克洋  1983年

真っ赤なトマトになっちゃいな

 あの阪神・淡路大震災から、丸6年経過した。私は京都市在住なのだが、当日の朝はいつもと同じように目を覚まし(私には地震で目を覚ました経験がない。一番に死ぬタイプである)、いつもと同じように出勤し(京都市バスは台風に直撃されようがなんだろうが絶対に運休しない。その代わり時刻表というのは常時あってなきがごとしである)、そうしたら職場の机の上の書類が床に落ちていた。……その程度だった。テレビで見て初めて神戸の惨状を認識したのだった。後日、神戸に行ったら、臨時に設置されたトイレやバス停には長蛇の列。コンビニの中は空っぽで品物の「し」の字もない。これは、大学時代にコンビニでバイトしていた私には、ちょっとした衝撃だった。そしてビルは飴のようにねじれて崩壊していた。そのときに思ったのは「あ、童夢のロケができるな」ということである。

 『童夢』は、団地を舞台に繰り広げられるサイキック・ウォーズを描いた作品である。巨大マンモス団地で連続変死事件が25件も発生。奇妙なことに、遺体からは1つずつ何かが無くなっていた。警察は懸命に捜査を続けるが、犯人に繋がる糸口は見えてこなかった。そして、警察をあざ笑うかのように、団地の見回りをしていた一人の警官が変死体で発見され、担当の刑事部長までが不可解な死を遂げてしまう中、一家で団地に引っ越してきたばかりの少女は、団地内に住む老人が超能力を悪用して殺人を行っていることに気付く。優しくて世話好きの少女とボケて幼児退行を起こした老人、二人の「子供」の壮絶なエスパー同士の戦いは、やがて団地全体を巻き込む大惨事へと発展していくのだった……。

 神戸の惨状は、正に、そこに描かれた大破壊そのものだった。いや、あまりにも呆気なく、奇妙な光景で、大友克洋の圧倒的な画力に感じたリアリティなど、そこには全然なかった。だからなのか、そこへ「観光」に来ている人は多く、使い捨てカメラは飛ぶように売れていたし(倒壊したビルの除去作業の横で屋台を出して売っていた)、それで記念写真を撮りまくるオバハン軍団は沢山いた。さすがの私も、それには嫌悪感を覚えたが、かと言って、全否定するだけの清い心を持ち合わせているわけでもなかった。不謹慎のそしりは免れないし、被災された方や、その関係者の方には申し訳ないが、しかし、あれは、恐らく二度とは見られない一大イベントだったのだ。それに、ボランティアと称して大挙押し寄せた連中にしたところで、その大半はイベントに参加する程度の意識だったに違いない(その証拠に、ごく一般的な地域でのボランティア活動が活性化したという話は寡聞にして知らない)。更に、復興事業に絡んで賄賂を貰っていた助役が逮捕された。あの震災はいったい我々、被災したわけでもなければ、知り合いに被災者がいるわけでもない傍観者の心に何を残したのだろうか。想像力とは、なんなのだろうか。久しぶりに、この本を引っ張り出して、こんなようなことを考えた。



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