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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ぼくと、ぼくらの夏

樋口有介  1988年

スケベオヤジのいる限り、ハードボイルドは不滅です

 歳をとるとですね、ガチガチの本格謎解きからハードボイルドへ、と趣味が移行してきたのですね。「本格は人間が描けていないのでダメだ」とか「あんなものは小説ではなく単なるパズルだ」なんてことを言うつもりは毛頭ありません。まぁ、いろいろ理由はあると思うんですけど、大きくは、①老化で謎解きに脳みそを集中できなくなった②味気ない生活に疲れて洒落た文章に耽溺したくなった、てなところかしら。別の言い方をするなら、歳とっちゃったもんで、参加型から観賞型に変わらざるを得なくなってきたのです。情けないことです。昔はチャンドラーなんて、どこが面白いねん、とか思っていた(いまだに再読してませんけどね)のになぁ。さて、樋口有介。良いです。もぉどっぷり耽溺しちゃいましょう。

 主人公の戸川春一は、フォルクスワーゲンを乗り回している巨人ファンの刑事を父に持つ三多摩地区の高校二年生。けだるい夏休み、万年平刑事の親父が言った。「お前の同級生の女の子が死んだぞ」……同級生の岩沢訓子が死んだ。自殺らしい。偶然のことでお通夜へ出かけたが、どうもおかしい。それをキッカケに、春一は、テキ屋の酒井組の娘である酒井麻子と急接近し、訓子の死因を調べるために奔走する。しかし、追い討ちをかけるように今度は別の同級生である新井恵子も変死。親しい子ではなかったけれど、こう次々と殺されては……。

 樋口有介は、この手の作品をたくさん書いていて、正直、どれがどれだったか分からなくなるようになるほど。『風少女』『林檎の木の道』『ともだち』……どれも同じような感じなので、まぁ代表的なところで、これを紹介しているわけですけど、この人の青春ミステリーという奴は、もぉとにかく、男ならハマること間違いなしのかっこよさなのです。なんなんでしょう、このカッコ良さは。この「くささ」は。主人公が瑞々しいんだか枯れ果ててるんだか、こんな高校生活送っている奴なんかおらんわい!て言うか、この世にあり得んわい!とか思いながら、こんな高校生活だったらカッコ良かったのになぁ、と思っている自分がいたりする。私の高校生活なんて、色気ゼロでしたからね。中高6年間男子校だったもんで、女の子と話したこともないもんね。つらつら考えるにハードボイルドにハマる理由ってのは、ただ歳をとったからだけではなくて、歳をとっても、まだスケベ心があるから、なのでしょうな。そんなオッサンは、万年平刑事の親父にどっぷり感情移入して読みましょう。


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