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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

忍法八犬伝

山田風太郎  1964年

狂!戯!乱!盗!惑!淫!弄!悦!(爆笑)

 御存知、曲亭馬琴による『南総里見八犬伝』を元ネタにした風太郎忍法帖長編第12弾。『南総里見八犬伝』は我が国の伝奇小説の古典で、アレンジを施され、怪作『アストロ球団』も生み出しました。風太郎には『八犬伝』という真面目な方の作品もありますが、それとはまったくの別物ですので御注意を。ちなみに『八犬伝』は、風太郎版『八犬伝』と言うべき「虚の世界」と、執筆者馬琴を描く「実の世界」が同時進行するアクロバティックな小説です。これも、かなり面白い作品ですが、アホな方である『忍法八犬伝』も抱腹絶倒の快作。村上豊によるカバーイラストが、これぞ山田風太郎!って感じで素晴らしい。中身はタイトル見てもらったら、そのまんま……て言うか、とにかく山田風太郎に関しては「面白いから読みなさい」、これで充分。

 八犬士が活躍した頃より150年ほど経った江戸時代初期。将軍家に家宝である伏姫の宝珠を献上することになった里見家。ところが、里見家取り潰しを企む本多佐渡守正信(と服部半蔵)の命により伊賀くノ一エロ軍団によって「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」ではなく「狂」「戯」「乱」「盗」「惑」「淫」「弄」「悦」の文字の入った珠にすり替えられてしまう(!)その宝珠を取り戻すべく、かの八犬士の子孫である老八犬士たちが追いかけるのだが、あと少しで珠を取り戻せるといったところで逃げられてしまう。逃がした責任をとって、また事の重大さを当主に理解させる為に老八犬士は自害、甲賀で忍術の修行をしている八犬士の跡取り息子8人に珠を取り戻させるべく文を使わすが、何日経っても音沙汰のひとつすらない。バカ息子どもは甲賀を逃げ出し、江戸で遊び呆けていたのだった。当主・忠義は当てにならず、仕方なく、当主の奥方で、バカ息子どもの初恋の相手、村雨が単身江戸に向かう。これを知るや、バカ息子どもは奮い立つ!腐っても八犬士の末孫、落ちこぼれとはいえ甲賀卍谷で忍法修業したバカ息子8人VS服部半蔵率いる伊賀のエロ女忍者8人の熾烈果敢な戦いやいかに!

 時代劇史上空前絶後のバカバカしさを誇る里見家取り潰し策(わざわざ、そんな珠を作ったのか、佐渡守ともあろう者が)、更にその上を行くバカバカしさの忍者達の死闘!忍法「蔭武者」対忍法「袈裟御前」!どんな対決なのか実に興味津々でしょう?他にも忍法陰舌、忍法天女貝など名前からしてエロ丸出しの忍法(中には「それって忍法か?」というものもあるけれど)も続々登場、里見家存亡を賭けた戦いなのに、実にカラッとしていて(なにしろ戦っている連中は里見家なんかドーデモよく、ひたすら村雨姫のために!だから)、例によって哀しく無情なラストまで一気に読ませます。


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