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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

おんな牢秘抄

山田風太郎  1959年

創元推理文庫にありそうな一冊(ややネタバレ)

 山田風太郎の時代ミステリです。舞台は江戸ですが、忍法帖ではありません。風太郎の時代ミステリには明治時代を舞台にした『明治断頭台』『警視庁草紙』という大傑作があるのですが、この作品も負けず劣らず面白いです。面白いってだけなら肥大した○○○○が凶器っていう某短編が爆笑ものだし、世界一タイトルが強烈な「うんこ殺人」ってのもあります。『神曲』をベースにしているだの人間批判が込められているだのと理屈をこねたところで、中身が「絢爛たる催吐剤、人間カレー・ライス」では……。狂ってるなぁ。ええ歳した大人(当時27~28歳)の書く文章とは思えない。思いついても書かないでしょ、普通?

 さて、これはいつものようにいつものごとく連作短編集である。「いつものように~」の意味、分かりますね?短編だと思わせて、最後に……というアレですよ、アレ。創元推理文庫に入っている若手の作品によくある、あの仕掛けです。本家本元、元祖風太郎得意の仕掛けを、たっぷりとお楽しみください。

 舞台は八代将軍・徳川吉宗の治世の江戸。名奉行と謳われた南町奉行・大岡越前守が江戸の治安を預かっていた。しかしながら、その裁きに納得できない越前守の娘、霞は、「女が女を裁くなら、もののあわれを知らぬ男が裁くのと違った裁きができる」と、ある行動に出る……。さて、しばらくして、小伝馬町の女牢に「姫君お竜」と名乗る新入りが入ってきた。お竜は、入牢早々、牢名主の度胆を抜いて牢内の御作法を改め、一目置かれる存在となる。そして、心ならずも犯罪に巻き込まれ、既に死罪が申し渡されている6人の女囚、お玉、お路、お関、お半、おせん、お葉に接触し、彼女たちに掛けられた冤罪を晴らしていく。そして、それぞれの事件の真相が、江戸を震撼させたある大事件につながっていく……。

 という、なにやら昨今のウーマンリブ(って言葉は死語か)の人たちが喜びそうな題材である。俺はそんなんどうでもいいけどね。俺は男尊女卑やから。正確には自尊他卑。それはともかく、主人公、姫君お竜の活躍が楽しい大江戸女探偵絵巻。映像化もされていますが、風太郎原作ということで、エロの世界に傾いているのが残念。アイドルを主役に据えれば、もっと多くの人に風太郎作品の面白さを啓蒙できる絶好の作品なのに、なんとも勿体無いことです。この作品自体は、決してエロではないので、安心して大いに楽しんでいただきたいと思います。あ、この文庫、先に解説を読んじゃいけませんよ。ネタバレしていますからね。私の場合、本屋で解説だけ立ち読みしてから買うので何回も被害に遭いましたよ。これは、それほどひどいネタバレじゃなかったけれど、創元推理文庫の亜愛一郎シリーズ(泡坂妻夫)の田中芳樹による解説とか、光文社文庫の墨野隴人シリーズ(高木彬光)の解説なんてひどいもんですよ。気をつけてね。


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