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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

将太の寿司

寺沢大介  1992年~

回らない寿司には縁はないか?

 北海道、小樽。関口将太の実家は「巴寿司」という寿司店を営んでいたが、悪逆巨大チェーン店の「笹寿司」によるヤクザ顔負けの嫌がらせのせいで最低の材料しか手に入らず、店は廃れてしまっていた。笹寿司の鼻をあかすために「寿司握りコンテスト」に出場した将太は、東京の名店「鳳寿司」の親方である鳳征五郎に職人としての心がけを認められ、一人前の寿司職人になるため単身東京へ向かう。鳳寿司にて修行を続ける将太に、征五郎親方は「新人寿司職人コンクール」出場を勧める。将太を待ち受けていたのは、超絶秘技で寿司を握る圧倒的なライバル達、強化される無茶振り寸前の勝負の課題、そして笹寿司の魔手であった。強敵たちとの戦いをくぐり抜け、数々の苦境を跳ね返し、将太はより強靱な職人へと成長していく……。

 週刊少年マガジンに連載されていたのですが、もし週刊少年ジャンプに連載されていたら、どんどんエスカレートして、『包丁人味平』みたいになったのでしょうか。それも、『聖闘士星矢』とか『ドラゴンボール』とかを経た後のジャンプなので、寿司職人のサバイバルゲームを寿司教皇みたいな奴が主催して、屋久杉の一枚板のカウンターを前に寿司を握って、光物3人衆とか白身兄弟とかいう敵が出てきて、戦った相手は片っ端から仲間になっていって、最後は最大最強の超能力寿司職人か何かに立ち向かうというような……。まぁ、それに近いテイストがなきにしもあらずなんですけれど、幸いマガジン連載だったので、そこまでエスカレートすることもなく、常人の理解の範囲内でお話は進みます。また、『美味しんぼ』のように、薀蓄に終始して主人公に感情移入できなかったり、オヤジでも笑えないほのぼのギャグで締めたりといった技も使わないので、脱力する恐れもありません。

 そして、集英社になくて講談社にあるもの、それは人情味。手を変え品を変え人情バリバリの展開で見せます。話のネタが寿司だけに、実に日本的な情緒を感じさせながら物語が展開していきます。笹寿司の常軌を逸した営業妨害を見ると、江戸前寿司の話なのに、『どてらい男』『細うで繁盛記』のような花登筺の浪速の商人ど根性物語を思い出します。お涙頂戴と笑わば笑え。これに涙できないような奴ぁ日本人を廃業しろ。けっ、涙が出るのは、わさびがキツイからなんでぇ。なんだかんだ言って、浪花節ってのは受けがいいもんですよ、やっぱり。私ゃコンビニで立ち読みしていて何回目頭が熱くなったことか。まさか店内で涙を流すわけにはいかないってんで、心置きなく号泣するためにコミックス買ったんですから。さぁ、読んで泣きましょう。あぁ、寿司食いてぇ。回らない奴。


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