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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

仮面ボクサー

島本和彦  1988年

いい男

 この表紙。カッコイイですね。何かスポ根のイカス漫画だろうか……そう期待した貴方、残念ながら大間違いである。「ボクサー」というタイトルにひかれて、『あしたのジョー』みたいな感動を味わおうとした貴方、眼光紙背に徹し、隅から隅まで読んでも無理である。作者名を見なきゃ、作者名を。島本和彦。あぁ、この名前が出てきた段階で、これがアホ漫画だということは決定なのである。アホはアホでも、島本和彦というのは狂った作家であるからして、何を読んでも大抵面白いんですが、『仮面ライダー』のもろパクリ……いやオマージュであるこの作品の面白さは格別ですよ。島本漫画の最高傑作と断言してしまいましょう。

 世界制覇をもくろむ悪の組織「世界征服ジム」はその野望のために、日本ボクシングコミッショナー拳一郎を洗脳し、彼らが擁する「怪人ボクサー」を次々と認定させていった。コミッショナーの認可をたてに卑怯な手段で勝ち上がり、日本ボクシング界を荒らし回る怪人ボクサー達。拳コミッショナーは息子三四郎の必死の説得によって洗脳を解かれるが、世界征服ジムの刺客の前に斃されてしまう。全てを知った三四郎は唯一手元に残った「仮面ボクサー」の変身セットを身につけ、ボクシング界の平和のため戦うことを決意する。仮面ボクサーとなった拳三四郎は苦戦しながらも敵怪人ボクサーを次々と打ち負かしていく。しかし、新たな挑戦者が現れる限り、ボクシング界を守るため、仮面ボクサーの戦いは続くのだ!

 仮面ライダーと言うよりは、むしろ『タイガーマスク』の世界に近い気もするけれど、そんなことはどうでもよろしい。出てくる敵ボクサーが、怪奇クモボクサー(やっぱり敵はクモから始めるのがお約束)、恐怖コブラボクサー、怪人カマキリボクサー、食虫植物ボクサー、ブロンドボクサーとアホばっかりなのが素晴らしい。食虫植物って固有名詞じゃないし、ブロンドってただの金髪じゃないかなんてことも気にしてはいけない。おまけに最後にして最強の敵ゴッドボクサーの正体がアノ人だったりしても怒り出してはいけない。おいおい、島本、頭は大丈夫か、テンプルに一発食らったんと違うかというような異様に燃える展開に、読んでいるこっちもノックアウト。何も考えずに、バカバカしさに現を抜かして楽しんでいただきたい作品です。こんなもん真面目に読んでいたらアホになりまっせ。何が笑えるって実際にマスクを作ってコスプレしている作者が笑える。そう言えば『ウイングマン』の桂正和も同じことをやっていましたな(最近はすっかり作風が変わってしまいましたが)。気持ちは痛いくらいによく分かるけれど、揃いも揃って京本政樹症候群ですね。


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