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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

なめくじに聞いてみろ

都筑道夫  1961年

手に汗握るアクション、アクション、アクション!

 都筑道夫はアクション小説でも大活躍しているのであった、というわけで、文庫で復活したこの作品を御紹介します。「昭和ミステリ秘宝」として絶版作品を復刻した扶桑社文庫は偉い!『真珠郎』(横溝正史)を併せて出したのも偉い!たいていのミステリは昭和じゃないのかとか、平野甲賀の装幀がいささか気に入らない(特に『真珠郎』は、杉本一文の傑作表紙絵を知っているだけに、実に、実に無念である……)とか、そんな瑣末なことはドーデモイイ、こういう企画はばんばん続けてもらいたい。

 未だ戦後の面影を残す昭和の半ば。銀座四丁目にふらりと現れた謎の青年、桔梗信治。一見すると山出しの田舎者にしか思えない彼には奇妙な背景があった。信治の父親信輔は、かつてナチスで研究をしていた天才科学者かつ殺人狂であった。といっても自分で手を下すわけではなく、突拍子もない殺人方法をいくつも考案し、通信教育で殺し屋を育成していた赤ペン先生だったのだ。信治は、父の遺した「血に餓えた遺産」を清算するため、弟子の殺し屋たちを探して殲滅するために東京へやってきたが、殺し屋たちの顔も名前も居場所も人数も、彼らが得意とする奇想天外な殺人方法も分からない。信治は、自動車窃盗犯の大友ビル(仮名)、情報サービス会社エージェント鶴巻啓子、壷振りの佐原竜子らの力を借り、自分をターゲットとして殺し屋たちを雇い、返り討ちにする作戦に出たのだが……。

 全編が想像もつかない方法で襲ってきた殺し屋をいかにして倒すかというアイデア合戦の殺し合いという、よく考えたら極めて不道徳で不健全でお子様には薦められない殺伐とした内容なのだが、案外スッキリ軽く読めてしまうのである。都筑の筆が快調この上なしということと、もともとが週刊誌連載のものなので、連作短編みたいな作りになっているのも読みやすさの一因でしょうか。後に岡本喜八監督が『殺人狂時代』チャップリンの映画とは関係ない)として映画化しました。どこをどう押したら主役が仲代達矢になるのかよく分からないし、受けるイメージはかなり違うのだけれど、敵役の天本英世が良かったですね。いや、やっぱり団令子ですか。都筑道夫のアクションものに関する腕前は、かなり評価されていたようで、『紙の罠』が宍戸錠の『危いことなら銭になる』(浅丘ルリ子が可愛い!)、『三重露出』が小林旭の『俺にさわると危ないぜ』(松原智恵子が可愛い!)として映画化されているし、三橋達也の国際秘密警察シリーズ最終作『国際秘密警察 絶体絶命』の原作も書いているし、宝田明の『100発100中』と続編『100発100中 黄金の眼』では脚本も書いている。おまけに『キイハンター』『スパイキャッチャーJ3』、挙句の果てには『キャプテンウルトラ』にまで関わっていて、このうえ、雑誌の編集はやる、海外ミステリは翻訳する、ミステリ評論はやる、自分でもミステリを書くといったことをしていたのだから、まさに超人です。一体いつ寝ていたのだろうか。


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