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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

復讐法廷 OUTRAGE

ヘンリー・デンカー  1982年

人を殺してきた。正式に受理して、裁判にかけてくれ。

 通り魔殺人の犯人を事件当時未成年だったにもかかわらず実名報道したとのことで新潮社が犯人から訴えられていた裁判で、大阪高裁は実名報道OKの逆転判決を出したのである。素晴らしい。よくやった。これこそ一般市民感情と遊離のない判決というものである。しかし犯人はコレを不服として更に争うつもりらしい。しゃらくさい。人殺しの分際で何をぬかすか。思い上がりも甚だしい。何が人権か。人殺しなんぞに人権があるとでも思っているのか、バカタレめ。世の中の人権擁護派だの死刑廃止論者だのは、その目の前で家族を皆殺しにしてやったらええんじゃ。真っ当に生きているものを守る、それが正義というものじゃあないのかね、ええ?……と、いうわけで、今回御紹介する作品は、強姦・殺害された娘の復讐を成し遂げた父親をめぐる裁判の物語である。

 その時、法は悪に味方した……!ある白人女性が、黒人男性に強姦されたうえ殺される。その女性からは犯人である男の指紋、精液と完全な物的証拠が揃うが、証拠収集の際に法律違反があったことから、その証拠は排除されてしまい、男は無実となる。被害者の母親は、裁判の結果にショックを受け死んでしまう。愛娘を強姦・殺害され、妻までも失った父親は、憎むべきその男を白昼の路上で射殺し復讐を遂げる。凶器、目撃者、犯意など、すべては父親の有罪をさしており、「心身喪失で殺したのではない。法律の不備を告発するつもりで、明確な意思をもって殺人をしたのだ」と自首した彼に有罪判決が下ることは確実……。しかし、信念に燃える少壮の弁護士ベン・ゴードンはこの父親を救うべく、ほとんど弁護不可能な裁判に挑む!規範と同情の狭間で葛藤する陪審員たちは、いかなる決断を下すのか。

 ……泣けます。平凡でも確かな幸せを、いきなり奪われる理不尽さ。正義と信じた警察や裁判所は何もしてくれず、あろうことか犯人の肩を持つ(と少なくとも被害者遺族には思える)。こんな立場に立たされたらどうしますか?被害者遺族であり、殺人犯となった父親の心情を思うと心が震えずに入られません。おっと、ただ感動させるだけの話じゃないですよ。この被告人を、いかに無罪に持ち込むか、という法廷ミステリとしても傑作なのです。海外作品であり、また法律用語が出てきたりするので、とっつきにくいかも知れませんが、是非、読んでみてください。そして考えてみてください。社会のルールとは何のためにあるのか。本当に守られるべきものとは何なのかを(おっ、今回ちょっとシリアスにまとめてみましたね)。


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