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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ザ・ベリー・ベスト・オブ「ナンシー関の小耳にはさもう」100

ナンシー関  2003年

テレビの下世話化を憂いた予言の書

 「週刊朝日」の伝説的連載「小耳にはさもう」。ブラウン管のかなたに去ったあの人、今も活躍中のこの人に対する容赦なきコラムに、極め付きの一瞬を刻んだ消しゴム版画スペシャルバージョンでお送りします。2002年6月に惜しくも呑逝した不世出のコラムニストのベスト100。

 何しろ業界でも評価の高かった人なので、いずれ、ちゃんと読まなくてはとは思っていたのですが、どれから読んでいいか分からない状態だったナンシー関。この『小耳にはさもう』を含む耳シリーズが『聞いて極楽』『聞く猿』『耳部長』『秘宝耳』『耳のこり』、何シリーズが『何様のつもり』『何をいまさら』『何の因果で』『何もそこまで』『何が何だか』『何がどうして』『何だかんだと』『何はさておき』『何をかいわんや』『何を根拠に』、テレビ消灯時間シリーズが『1』『2』『夜間通用口』『冷暗所保管』『雨天順延』『天地無用』と大量に出版されています。ただ書き散らしただけなら頷けるけれど、彼女の場合は消しゴム版画も彫っているわけで、さぞかし机の上は汚かったのだろうなぁと思われます。消しゴムと言えば、消しカスを練って鼻くそみたいにしたとか、匂い消しゴムが流行った時には、あまりに良い香りに思わず噛り付く奴が続出した(歯形のついた消しゴムが多かった)とか、いろんな思い出があります。今では高クオリティのガチャガチャ(ちなみに「ガシャポン」はバンダイの登録商標)も、昔はスーパーカーとかキン肉マンの安っぽい消せない消しゴムだったなぁ。

 それはさておき、見事と評される消しゴム版画ですが、顔自体は、よく見ると大して似てないものもたくさんあります。見事なのは、横に彫られた一言。その人を象徴し、コラムを総括するのに、完璧に決まった一言が添えられています。ナンシー関の鋭いセンスが伺えるもので、すべての魅力が、この一点に集約されているといっても過言ではないでしょう。今ではみんな忘れていて、そもそも誰だか知らないんじゃないかと思われる安藤和津というオバハンが何故か一時期テレビに出まくった時期があったが、その安藤の顔の横に彫られた「きゃあっ」の一言に込められたどす黒い悪意はどうだ。これだけで安藤の(そして安藤を起用したアホ製作者どもの)低能ぶりを見事にこき下ろしているではござらぬか。もちろん、コラム本体が抜群に面白いことは言うまでもありません。鋭い観察と毒気もたっぷりな文章は、ちょっと背筋が寒くなるほどです。こういう視聴者がいないと、ますます下らん番組が増えていくなぁ。死んじゃって、もう新作が出ないのが残念です。合掌。


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