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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

二重螺旋の悪魔

梅原克文  1993年

GOO vs UB(これじゃ何のことかわからんな)

 SF映画は見るけれどSF小説は苦手だ。そんな人は多いと思う。そもそも、世間で「SF映画」と呼ばれているもののうち、どの程度が真に「SF(サイエンス・フィクション)」を名乗るに足るのか、という問題はありますけれど。ただの「SFX(スペシャル・エフェクツ)映画」じゃないのかとか、『スターウォーズ』なんて通俗スペースオペラはSFと認めない!とかいう議論ですね。その問題の決着は私の手には余るので、棚上げにして話を続けますが、いわゆるSFは、その世界に入り込む(未来でも宇宙でも、その世界の約束事を了解する)のに暇がかかりますね。映像なら一目で分かるし、納得させてもらえるけれど、小難しい理屈とかを文章で書かれても理解しづらいし、それを乗り越えてなおかつ面白い保証はないし、理系じゃないし、というわけで、私もSF小説は苦手な口です。まぁ食わず嫌いってところもあるかも知れませんけどね、なんかこう、辛気臭そうなイメージが強いでしょ、SF小説って。やっぱりSFは映像でなきゃ、というのが大方の意見ではないでしょうか。もっとも『惑星ソラリス』『2001年宇宙の旅』だって欠伸せずには見られない私ではあるのですが。しかし、これは、そんな杞憂を一発で吹き飛ばす面白さ。私も大興奮です。

 遺伝子操作監視委員会C部門のエージェント深尾直樹は、新進のベンチャーバイオ企業ライフテック社にいた。一昨日からそこの実験区画P3施設に勤務する複数の科学者が自宅へ戻ってこないという連絡があったからだ。P3施設はバイオハザード発生のため封鎖されており、監視カメラの画面に映るのは研究者たちの死屍累々の山。更に画面の隅には、自然の創造物ではない怪物の姿も見えていた。室内に入れないため、実験物運搬ロボットを遠隔操作して内部調査を進めた結果、恐るべき研究記録が収められたビデオカメラを発見する。そこにはDNA塩基配列・イントロンに隠された暗号を解読し、それを基に未知のタンパク質を培養する一部始終が記録されていた。事故の真相に見え隠れするDNA塩基配列・イントロンに秘められた謎。その封印が解かれるとき、人類は未曾有の危機を迎える!

 ということで、バイオでホラーでアクション炸裂、挙句の果てには大戦争という、とてつもなく豪儀な展開。ここまでやったら天晴れです。古いSFファンなら「これはSFではない」なんて貶すかもしれませんが、いいんです面白ければ。誰がなんと言おうと、エンターテインメント、センス・オブ・ワンダーが一番大切なんです。科学論文じゃなくて、娯楽の一つである小説なんですからね。上下巻の分厚さなんて全然気にならず、一気読みしてしまうこと請け合いです。推理作家協会賞を取って評判になった次作『ソリトンの悪魔』より、こっちの方が面白かったくらいです。