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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

笑う怪獣 ミステリ劇場

西澤保彦  2003年

あなたの目はあなたの体を離れて、この不思議な時間の中へ入っていくのです……

 鬼才・西澤保彦、ついにバカ路線に帰ってきました!1998年から2002年にかけて発表された7編を集めた短編集です。怪獣が出ます!これは比喩でもなんでもなくて、本当に怪獣が出ます!何故と言われても困りますが、出るといったら出るんです!出るんだから仕方ないんです!さぁ、みんな、しっかりついてこい!というわけで、ただでさえ読者を選ぶ作品なのに、表紙は相変わらず絵が下手な喜国雅彦。これで売り上げは更に一層ズン!と落ちるはず。いくら喜国の『傷だらけの天使たち』が傑作で、探偵小説の古書収集が趣味というハードなマニアでも、装丁をやらせるかどうかは別問題だと思うぞ。同人誌じゃないんだから、仲間内だけで商品を作っちゃダメだろう。

 それはさておき、西澤は「人格が入れ替わる装置」だの、「死者がよみがえる」だの、「同じ時間が何度も繰り返される」だの、何が何だか分からないSF的な仕掛けを使って論理的な推理を強要するアクロバティックな推理小説が売りだった初期作品群から、最近は、幼少時のトラウマだの人の心の暗部だのと暗い方へ重い方へ走ってきている気がして、それはそれで面白い本がたくさんあるんですけれど、やっぱり、こういうアホ丸出しには格別の味がありますね。

 市役所勤めの正太郎、経営するアパレルメーカーが好調な青年実業家の京介、そして恐らく普通のサラリーマンのアタル。学生時代から悪友同士の3バカトリオは職場こそ違うものの、未だに独身で、暇さえあればつるんでナンパに明け暮れる日々だが、その成功率は決して高いものではなかった。しかし、ある日、 たまたま変わった三人組のナンパに成功し、一緒に無人島でデートすることになったのだが、そこにはなぜか全長80メートル程の巨大怪獣が、異臭を放って現れたのだった……。それ以来、ナンパしようとすると地球侵略を企む凶悪宇宙人、殺人を繰り返す悪の組織の改造人間などという非科学的なモノとやたら遭遇するようになってしまった。そのうえ、奴らは密室、誘拐、連続殺人と、なぜか解決困難なミステリを引き連れてくるのだ。

 一読驚愕、驚天動地の本格特撮推理小説とは言いながら、ここでは既に半分以上(推理小説という意味合いでの)ミステリであることを放棄しています。ここまでやれば立派!突っ込みながら大笑いして読むのが正解なのですが、よくよく考えると、こういうネタを大真面目にやると『ウルトラQ』とか『トワイライトゾーン』になるので、意外と古典的で由緒正しい作品群の系譜に連なるものなのかも知れない。でもアホ丸出し。


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