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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

少年探偵団読本

1994年

卒業できない子供たちのために

 江戸川乱歩後期の偉業である少年探偵シリーズの研究本。『怪人二十面相』から『超人ニコラ』(ポプラ社版では『黄金の怪獣』と改題)の絶筆まで、ミステリの巨匠、江戸川乱歩が生んだ少年探偵小説の魅力を120パーセント味わえる愛蔵版ガイドブック。単行本未収録作品も含め、オリジナル全作品を一挙紹介。シリーズ全作の詳細な解説はもちろん、二十面相の「本当の」正体や、明智夫人である文代さんの転地療養の真相など、マニアックな内容も嬉しい、読み応えアリの一冊。

 東京創元社の編集者、戸川安宣率いる「黄金髑髏の会」が、いい歳して少年探偵シリーズを読みまくって作り上げました。私も幼少のみぎり、学校の図書館にあったポプラ社版を全巻読破しました。何故か『透明怪人』『呪いの指紋』の2冊は家にあったりもするのですが、黄金髑髏の会によると、ポプラ社版は大人向けの作品を乱歩以外の作家が子供向けに書き換えたものまでシリーズに加えているほか、元のタイトルや順番を変えて、そのために中身にまで手を加えた悪逆非道な刊行物のようで、私は何だか申し訳ないような気がしています。しかし、今となっては、ポプラ社版しか手に入らないのですから、何とも仕方がありませんね。それにしても楽しい本です。なにしろ出てくる化け物(二十面相のコスプレ)が違うだけで、似たような話ばっかりのシリーズなので、ほとんど忘れてしまっていますから、改めて全部読んでみたいと思いました。

 ところで、この本を読んでいて思い出したんですけれど、私が小学生の頃に住んでいた家の近くに、等持院児童公園という小さな公園がありました。その公園の奥には、隣の敷地との境目に柵がめぐらせてありました。ある日、私は偶然、その柵の一箇所が開くことを知ったのでした。おそるおそる扉を開け、中に入ると、向こうの方に洋館のような建物が見えました。一面の落ち葉を踏みしめて洋館に近づくと、それが図書館であると知れるのです。中は、だるまストーブで温まっていて、そして、本の持つ独特の匂いが満ちていて、とても居心地がよいのです。私が通っていた小学校の図書室は、当時でも珍しくなっていた木造の校舎の中にあったのですが、そことは違って、なんとなくモダンな雰囲気の建物でした。私は、何度も何度も通い、学校の図書室にはなかったシャーロック・ホームズ全集などを借り出したものです。やがて私は引っ越してしまったので通うこともなくなりましたが、あの図書館は今でもあるのでしょうか。地図を見ても、該当の箇所には何の記載もありません。市立の図書館でないことは確かなのですが、一体、あれは……そもそも実在などしていなくて、私の幻想の中にだけ存在する図書館なのでしょうか。


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