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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

犬神家の一族

[作]横溝正史 [画]つのだじろう  1976年

是非アニメ化していただきたい佳作

 那須湖畔の本宅で信州財界の大物、犬神佐兵衛が莫大な遺産を残してこの世を去った。佐兵衛は生涯に渡って正妻を持たず、それぞれ母親の違う娘が3人いた。遺言状は、遺族が全員集まったときに開封されることとなっていたが、長女・松子の息子、佐清だけがいなかった。彼は、数年前、「犬神憑き」になったとされ、近所の衆から「犬神おとし」にかけられたのだ。そのとき犬神を燻し出すために焚いた火が、松子夫妻の家を全焼させ、そのどさくさに佐清の姿が消えてしまっていたのである。そんなある日、金田一耕助は、犬神家の顧問弁護士を務める古舘に請われ、犬神家の本宅のある那須湖畔を訪れた。なんと、行方不明だった佐清が、ひょっこり帰ってきたというのだ……!

 あの『恐怖新聞』のつのだじろうによるコミカライズなのである。すごいでぇ、このアレンジ。まぁ、石川賢の『魔界転生』ほどじゃないけれど、まず、絶世の美女っていう野々宮珠世ですね、市川崑の映画では島田陽子、最近のテレビ版(稲垣メンバーが金田一)では加藤あいと、慎ましやか日本美人系が起用されてきたヒロインも、つのだじろうが描くとトテモ濃い顔になっています(おかげで俺の好みの美女からは遠のいてしまった……)。つのだキャラは目がキツイので、全員が悪役に見えてしまう(ミステリを描くにおいては都合がよろしい)ということもあるんですが、それは作家の個性ってことで措いておくとしても、金田一がどこのオッサンかと思うような人に描かれていることについては、軽く度肝を抜かれますね。原作のどこをどう読んだら、こんなキャラになるねん。もじゃもじゃ頭に丸メガネ、口ひげ生やして三つ揃えスーツというわけのわからん格好の短足オヤジ。この違和感は片岡千恵蔵版の『三つ首塔』(ソフト帽をかぶり、ダブルのスーツで決めた金田一が犯人と銃撃戦!)を見たとき以来だな。

 てなことを考えつつ読み進めると、ストーリー展開で脳天に一撃を食らわされました。そりゃあ、元が本格推理小説なんで、大きな流れ自体は変わっていませんけれど、オカルト漫画家つのだじろうの面目躍如ってな展開が待ち受けております。原作の要素を巧みに活かし、自分の世界に引きずり込む手際は、まさに驚愕の一言!あの三種の神器「斧、琴、菊」をあんなふうに使うなんて、素晴らしい思い付きじゃございませんこと!しかも、それが単なる思い付きなんかじゃなくて、原作をキッチリと咀嚼した上でのアレンジなので唸らされるのであります。一読の価値あり。『悪魔の手毬唄』のコミカライズも手がけていますけれど、そっちのアレンジぶりもすごいので、併読をオススメしますぞ。


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