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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

らせん

鈴木光司  1995年

あいつは死んだはずなのに

 『リング』は本作のネタフリに過ぎなかった!というわけで、ご存知ベストセラー『リング』の続編です。極端なことを言えば、これがなければ『リング』なんてものは、ただのホラー小説の域を出るものではありません。映画の「来るぅ、きっと来るうぅ」という狂った歌が流行ったり、貞子がアイドル化したりと大評判になり、独自の続編『リング2』という映画まで作られましたが、正直、私は大して面白く感じなかったです。同時期に読んだ本なら、間違いなく『パラサイト・イヴ』の方が面白かったですね。まぁ、映画は大した出来ではなく、葉月里緒菜の乳首の一件でしか話題にならなかったのも仕方がありません。さて、本作で披露されるのは、『リング』の内容だけでなく、そのジャンルさえもひっくり返してしまう荒業。こんな大技は、そうそう味わえるものではありません。

 まず『リング』のあらすじから。仲良し女子高生グループの4人が、別の場所で全員同時に急性心不全で突然死したという怪事件を調査する雑誌記者・浅川は、怪死事件の原因が、「見ると1週間後に死ぬ呪いのビデオ」であることを突き止める。自分はおろか妻子にもビデオを見せてしまった浅川は、同級生の高山にもビデオを見せ、2人で呪いを回避する方法を探すことにする。なんとかビデオにまつわる謎を解き、死を回避した浅川だが、高山は死んでしまう。高山に対する呪いは解けていなかったのだ。このことにより、浅川は呪いを回避する真の方法を知り、妻子を救いに向かう……。というところで『リング』は終わっていたのですが、『らせん』は、この高山の死体の解剖で幕を開けます。東京都監察医の安藤は、変死した高山の解剖を担当する。高山は、死の直前、記者の浅川と「呪いのビデオ」の調査を行っており、その浅川も妻子を失い、廃人同様になっていた。解剖の結果、死因は、心臓近くの冠動脈に発生した肉腫によって、血流が停止したことによる心不全と判明するが、胃の中に、暗号らしき数列が書かれた紙片が見つかる。これを不審に思った安藤は、浅川の「一連の事件に関する手記」を手に入れ、調査に乗り出す。

 『リング』のラストで助かるはずだった浅川の妻子が死んでいたという驚愕の事実。ということは、つまり、『リング』で解いたと思っていた呪いは解けていなかったことになる。では、何故、浅川だけが助かったのか?本来、説明なんかつかなくても誰も文句を言わないホラー作品に出てくる呪いを、科学の力で解いていく物語。なんと、ホラーである1作目をある意味否定し、2作目を不可能犯罪テーマのミステリにしてしまったのです。とにかく、読んで驚けとしか言いようのない展開。おまけに、3部作完結編となる『ループ』では、更にひねったアクロバットを披露、振り回される快感を堪能できます。


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