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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

魔王城殺人事件

歌野晶午  2004年

初めて子ども向けらしいミステリーランド

 星野台小学校に通う五年生の翔太、KAZ、おっちゃんは、5年1組の探偵クラブ「51分署捜査1課」なるものを結成し、様々な事件を解決して調子こいていた。そんなある日、町のはずれにある悪魔の巣窟のような屋敷、デオドロス城(翔太たちが勝手に名付けた)にまつわる数々の怪しい噂(「満月の晩に幽霊が集まってくる」「庭には666人の死体が埋まっている」などなど)の真相を確かめるべく、よせばいいのに立ち上がってしまう。潜入直後、突然ゾンビ女(?)が現れたかと思うと、庭の小屋の中で謎の消失!新たに女子2人が加わった「51分署捜査1課」は再び城に。今度は小屋の中で乳母車男(!?)の死体を発見してしまうのだが、その死体も消滅し、男の死体は遠く大阪で発見される。やはりデオドロス城には何かただならぬ秘密が隠されているのだ。現場の写真も何故か何も写っていない不思議な状況で、彼らは事件の謎をどう解くのか……!?

 「かつて子供だったあなたと少年少女のための」講談社ミステリーランドの一冊。これまで『くらのかみ』(小野不由美)『透明人間の納屋』(島田荘司)『虹果て村の秘密』(有栖川有栖)『黄金蝶ひとり』(太田忠司)『探偵伯爵と僕』(森博嗣)『いつか、ふたりは二匹』(西澤保彦)『ほうかご探偵隊』(倉知淳)と読んできたけれど、これって本当に子供に読ませようと思って書かれているシリーズなのだろうか。そりゃあ主役は子供だし、それなりの設定にはなっていると思うのだけれど、昔、私が少年探偵団シリーズを読んだときのようなワクワクドキドキ感がない。変に理屈っぽくて説教臭い。完全に大人向けなのに「子供向けっぽく書いてみました」と提示されているだけに感じられて仕方がない。まことに胡散くさい。それとも最近の子供には、こういうのがいいのかしら。だとしたら随分夢のないことだと思う。まぁ、出版の趣旨は正しいと思うので、作家陣に、もう一度「子供向け」の意味を考え直して、軌道修正してほしいと思う。

 その点、この歌野の作品はシリーズの中で最も正しく子供向きのように感じる。本来、児童書というものは、こうあるべきではないのか。新本格派の一人として『長い家の殺人』でデビューしたときに、新本格擁護派にすら呆れられていた程度の作家ですが(最近は『葉桜の季節に君を想うということ』なんかで高い評価を受けていますけれど、そんなに大した作品とも思えない)、子供向きの本で新境地を開いてくれれば、それはそれで素晴らしいことだと思います。