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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

名演!Modern Jazz BEST SELECTION by REQUEST

FM東京「セレクト・ジャズ・ワークショップ」制作グループ+日本たばこ産業株式会社アド企画室  1987年

ジャズに名曲なし、名演あるのみ

アメリカが生んだ文化・芸術であるジャズは、国の歩みと同様に、融合、発展、解放、そして時には模索と、最も人間臭い過程を繰り返してきた。『ジャズに名曲なし、名演あるのみ』の言葉通り、瞬時のインプロビゼイションに自己の感性と創造性の全てを賭けたアーティスト達の演奏は、テンションとなり、リラクゼイションとなって漂い流れる。そして、最も人間的な文化所産であるが故に、時代を超えた生命力を持ち続けているのだ。ジャズは生きている。Jazz Lives!

 というわけで、FM東京が実施したリクエスト結果を基にした本です。リクエストは曲単位で実施していますが、曲とともに収録アルバムやアーティストのことまでキッチリ解説してあります。しかも、CDのライナーによくあるように、奏者のプロフィールだの録音日のデータだのといった面白くもなんともないことがダラダラ書いてあるわけではなく(誰それは何月何日生まれ~だけでライナーを終わらせている連中が「評論家」を名乗っていること自体噴飯ものですね)、簡潔で「読み物」になっている文章なのがイカス。他には日本中のジャズスポット一覧(発行年が古いから、もう店仕舞いしてしまったところもあるだろうけど)や、いわゆる文化人(これがまた60年安保とかヒッピーとか、そういうことを正当化したい世代だらけの「いかにも」な人選で、理屈っぽくて大笑い)によるエッセイ、ジャズの生まれた都市や劇場、更には映画や文学との関係についてのコラムも付いていて、なかなか充実の一冊です。装丁から何から、渋いジャズの雰囲気を見事に醸し出している名著と言えましょう。

 読み物としては、ジャズ評論界の天敵同士、後藤雅洋と寺島靖国というジャズ喫茶店主同士の対談も面白いです。それぞれの考え方は『ジャズ・オブ・パラダイス―不滅の名盤303』『JAZZの聴き方に法則はない』を読み比べると分かりますが、ガチガチの正統派vs感性勝負の快楽派の対決で、まぁ、それぞれの言い分に一理アリってなところなのだけれど、文化人達のエッセイも含めて、なんやかんや言うて、ジャズが好きな人ってのは、要するに「ジャズが好きな自分が好き」な奴ってことだということだけはよく分かります。なにしろ、ジャズというのは雰囲気を聞くものなのですから、そういう雰囲気に浸ってる自分を「かっこいい」と思えるナルシストたちによって成立している市場なのですな。


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