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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

大人のジャズ再入門 マイルスとブルーノートを線で聴く

中山康樹  2006年

切り口の変え方が芸の見せ所

 「ジャズは難しい」「どこから聴いていいかわからない」という声はよく聞かれる。確かにミュージシャンが個人事業主であるジャズはひとりにつき100枚、200枚のアルバムがあり、共演しているアルバムも合わせると、膨大な数がある。またその音楽の幅も広い。そこで、本書ではそんなジャズの特徴に合った聴き方を提案する。「点」として存在するアルバムを録音年月日とミュージシャンの相互関連に基づき「線」でつないで、より立体的に捉えようというものだ。この「線聴き」の基点はマイルス・デイヴィスであり、その先にはブルーノートが必然的に浮上してくる。さらに延ばしていくと、やがては主要なミュージシャンの座標軸が確立できてしまう―斯界の第一人者による画期的ジャズ・ガイド。

 とにかく『マイルスを聴け!』で有名な人です。スイングジャーナルというジャズ専門誌の元編集長のくせに、いろんなところに目配りせず、とにかく「マイルスさえ聴いていれば、他のジャズなんかいらん」と言い切るあたりが偉い。立派。その意気に感じて、『マイルスを聴け!』を読んでやりましたよ。とにかく全アルバムを紹介しているので、その本の分厚さに脱帽、うんざり。知っているアルバムのところだけ拾い読みして済ましてしまおうって思わせるには充分のボリュームだったので、あっという間に読めてしまったぞ。『エヴァンスを聴け!』も同じだったな。私には無理。

 てなことを書いていると、この人の書く本は面白くないのかという誤解を招いちゃうので慌ててフォローするけれども、面白いんですよ、この人の本は。ジャズ関係の書き手じゃ今イチオシです。なにしろ最近、寺島靖国が鼻につくようになっちゃってるもんでね。あのオッサンの本は昔の奴がいいです。それはさておき、中山康樹はどれを読むべきか。いわゆる入門用の本(『ジャズの名盤入門』『超ジャズ入門』『JAZZ聴きかた入門!』あたりね)も書いているけれど、やっぱり書き手の個性が爆発した奴を読まなくちゃ面白くない。というわけで、「マイルス万歳!」「ブルーノート万歳!」が合体した、この本をお薦めします。「大人」「再入門」ってタイトルを付けられると、こっちのプライドも微妙にくすぐられて、つい手に取っちゃいますな。商売上手だね、まったく。

 内容はというと、ジャズの発展を立体的に捉えるための秘訣が書いてありまして、これが、なかなか読ませます。『超ブルーノート入門―ジャズの究極・1500番台のすすめ』『超ブルーノート入門完結編―4000番台の至福』と併せて読めば更に面白いでしょう。アルバムそのものや聴き方のガイドとしてではなく、ジャズを巡る物語として、実に良く出来ていますが、名盤ガイドだと思って手にすると大失敗ということになりますので注意しましよう。ちなみに私はマイルス信者ではなく、マイルスの一番いいアルバムは『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』『マイルス・デイビス・アンド・ミルト・ジャクソン』(いわゆる「うんちマイルス」ね)だなんて思っている軟弱なタイプです。更に言えば、ブルーノート信者でもありません。だって、ブルーノートって、他のレーベルより駄盤比率が高いと思いませんか。そんなことありませんかそうですか。


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