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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

少女ヒーロー読本

早見慎司  2015年

強きをくじき、弱きを憎む

 1996年、映画秘宝がまだ月刊誌じゃなかった頃、濃すぎるムックだった頃(今より濃かったんだぜ)、第5弾として発売されたのが『夕焼けTV番長』だった。前作『男泣きTVランド』に引き続き、映画雑誌なのにテレビ番組の特集をやる(しかも、4冊目という早い段階で! ネタ切れだと疑われるのを覚悟で!)という素晴らしくイカしたムックだった。2冊とも、リンクから古本をゲットしてほしい。面白いんだから、ホントに。

 さて、その『夕焼けTV番長』に載っていた「美少女アクションよ、永遠なれ」が、この本の大元の元になっている。このときには、主に大映の伊藤かずえとか東映のスケバン刑事とか、そして何より東宝の『禁じられたマリコ』という、いろんな意味で禁じられてるドラマについて熱く語られていたのだった。それはそれでトテモ読みごたえがあったが、更にパワーアップ、バージョンアップして出たのが、この本。取り上げられている作品数も激増。聞いたこともないような作品名が挙がっている。著者は私より8歳年上ということだが大丈夫なのだろうかと、他人事ながら心配だ。そりゃ私だって見てましたけどね、『聖龍伝説』も『FIVE』も。

 で、この本に一貫して流れているのは、熱いドラマに対する熱い思いである。視聴者が思わずのめり込んでしまうような、熱いフィクション空間への思いである。「熱いことはダサい」という価値観が一世を風靡してしまったバブル期あたりから、テレビはつまらなくなった。多分フジテレビが諸悪の根源だと思うのだが、それは、時流にうまく乗ったことの証明かも知れない。しかし、時の流れが一つのメディアをいつまでもヨイショしてくれるわけもなく、結果としてテレビは時代遅れのメディアとなってしまった。もう、あの頃の熱いドラマをテレビで見ることは叶わないのだろう。この点、私は著者と違って、かなり悲観的である。今はソフトが充実しているから、昔のドラマを見ておけばいいや、とも思うし。

 あとがきには「本書のかなりの部分は、いったん2003年に電子書籍としてe-NOVELSから出したもの」をブログで形を整えた、とある。そのせいか、最初に『夕焼けTV番長』に読んだ時の熱が感じられなかったのが、いささか残念だ。確かに内容は格段に充実しているので、文句を垂れる筋合いではないのだが、少々バランスを欠いてでも、もっと『禁じられたマリコ』について書いてもいいのに、とか思ってしまう。それに、語る価値がないとして、いくつかの作品が出てくるが、そんなもんは「おまけコーナー」か何かで一覧表にしておけばいいんだし、その分、語る価値のある(でも、世間に知られていない)作品について、熱く熱く語ってほしかった。まぁ、著者としては、つみきみほについて思う存分書けたから良かったのかもしれんが。でも、この表紙は、ちょっと困る。最近の大阪モード学園のCM(「ソウル・ボサノヴァ」が流れていた頃のちょっと怖い奴ではない)に出てくるようなキャラがバーンと載ってると、レジに持って行きづらいではないか。


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