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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

杉本一文『装』画集 横溝正史ほか、装画作品のすべて

杉本一文  2017年

妖美の世界、ここに極まる

 角川文庫の横溝作品は、多くが絶版の憂き目にあい、おまけに表紙が愛想もクソもないデザインに変えられてしまった。なんなんだ、あの筆で書いた漢字一文字ってのは。洒落たデザインのつもりか。角川文庫に限らず、表紙を変えることで、新たな客を捕まえようとしているのは分かるが、どうもデザインは劣化の一途を辿っているだけのような気がしてならん。かつてのミステリーの表紙は、もっと品格ってものがあった。それはともかく、横溝正史作品と言えば、この表紙しかありえないというほどのインパクトを誇る杉本一文の作品が、ついに一冊の画集にまとまった。この恐ろしくも魅力的なデザインを目にする機会が永遠に奪われたかと嘆き悲しんでいた皆様、お待たせいたしました(まぁ、表紙目当てに古本屋を回る筋金入りの方々には、あまり関係ないのかもしれないが)。

 個々の作品の素晴らしさは、実物を見てもらえばいい(私は『獄門島』、『白と黒』、『鬼火』、超問題作『真珠郎』あたりが好みです)のだが、文庫カバーというのは、タイトル、著者名を入れて完成するので、表紙画だけでは少々物足りない気分になってしまうのだ。で、角川文庫のカバーについては、このレイアウトも天才的。絵の邪魔をせず、それどころかパワーアップまで実現したデザインは完璧の一言。作品によっては、これらを入れた完成版も併録されているので、このデザインの妙技も堪能できる。

 ただ、不満もある。横溝作品は、バージョン違いも含めて、すべて掲載すべきだった。これを実現できなかったのは何故なのか。全然「すべて」じゃねえじゃねえか。半村良や土屋隆夫の作品もいいけれど、やはり横溝の表紙をすべて見ることができると期待して買う人がほとんどだと思うのだが。それに、掲載されている作品についても、物によっては1ページに4枚と、文庫本よりも小さいサイズになってしまっている。どうしても、春陽文庫版江戸川乱歩作品の表紙だった多賀新の銅版画を集め、作品解説まで載せていた『銅版画 江戸川乱歩の世界』と比較してしまう(まぁ、あっちは全部で30作品しかなかったから出来たんだろうけど)。出版してくれたことには感謝感激雨あられなのだが、結構いい値段なのだから、もう少し丁寧に作ってほしかった。





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