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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

辛口! JAZZノート

寺島靖国  1994年

JAZZの聴き方に法則はない

 ジャズを聞きだしたら、まず間違いなくガイド本を買うと思うんですけどね。なにしろ、いろいろありすぎるし、とっかかりって奴が必要ですから。で、まぁ、ガイド本を見てると思うわけですよ。つい最近発売された本でも、何十年も前に発売された本でも、紹介してる評論家が誰でも、選ばれてるアルバムは同じじゃねえかってね。そりゃまぁ、「これこそベスト!」なんてものを選ぼうというのだから、オールタイムベスト級の作品が固定されるのは仕方ないにしても、最近10年に限ったもので選ぼうとか、もう少し違った切り口で紹介してみようとか、そういう頭は働かんのか、と。ジャズは個性が大事とか言ってるくせに、てめぇらに個性がまるで無いじゃないか、と。

 で、唯一そういうことをやってる人が、この寺島靖国なんですね。まぁ、純粋なガイド本とは言えないかもしれないけれど、とにかく読んでて面白い。他のジャズ関係の本が、妙に教科書だか参考書だか歴史書だかみたいな雰囲気を漂わせて、やたらと敷居を上げようとしているのに比べ、ただジャズが好きだというだけの(少々鼻につく)オッサンが、好き放題くっちゃべっているという、言ってみれば、ただそれだけの本なのに、この清々しさは何なのか。「世間での評価なんか気にせず、自分が好きだと思うものを好きだといえばいいのだ!」「名盤なんて自分が決めるのだ!」という、趣味の世界では当然の、しかし忘れがちなことを主張してくれるからなのですね。ガイド本を読んで、それに従って何枚かアルバムを聞いてみて、どうも自分の好みに合わない……私はダメなのかな……なんて自信を無くしてしまう前に、是非これを読んでみてほしいですね。

 この本が出たのは1987年(上に書いてある1994年というのは文庫化された年です)。なんと今(これを書いているのは2018年です)から30年も前なのに、いまだに新鮮に感じられるというのは、ジャズの世界(と言うか評論家と呼ばれる人たち)が、この間まったくと言っていいほど進歩してこなかったことを表しているのではないか。それを言ったら、寺島靖国の書く本自体、これ以上のものが出てない気がするのも事実なんですが、これを今から30年も前の時点で、デビュー作として書いてしまったというだけで歴史に名を残すに値すると思います。なんだかんだ言ったって、趣味の世界なんだから、自分に好き勝手させてほしいよね。いや、まったく。




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