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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

特捜最前線

[出演]二谷英明、藤岡弘、大滝秀治、本郷功次郎  1976~1987年

非情の犯罪捜査に挑む心優しき戦士達

 日本の、いや、世界の刑事ドラマの頂点に立つ作品です。♪ジャカジャーン!で始まる主題歌「私だけの十字架」をはじめ、『水戸黄門』でおなじみ、木下忠司のBGMも重々しくて良いですね。意味もなく走り回ったり、やたら拳銃を撃ちまくったり、いろんなものを壊しまくったり、すぐに殉職したりするだけの低脳体育会系刑事や、すぐに観光地に出張して名所で聞き込みをして名物を食いまくるほのぼの黄昏刑事なんかとは訳が違う。アクションあり、社会派あり、メインライター長坂秀佳が脚本を担当した回は本格推理のテイストも濃く、また、扱う事件も交通事故からスパイ衛星までとバラエティ豊かでありながら、熱いオヤジ臭という、他に見られない特質を一貫した名作の数々。なにしろ全部で508話もあって、すべてを語りきるなんて不可能ですから、ここでは、レギュラー刑事別に必見の傑作をご紹介しましょう。これでも厳選しまくった結果なので、他にも佳作、名作が目白押しです。これだけのテンション、クオリティで10年間も放送していたなんて信じられない。ファンのアンケートによる傑作選DVDが10セット発売されたのは快挙だけれど、アンケート結果には疑問もある(特に吉野関係のエピソード)ので、再放送に出会ったら絶対見逃さないように!真っ当な日本人なら、見終わった後、感涙に咽ぶこと必至です。

 <レギュラー別傑作選>

 主役  エピソード  解説
 神代恭介
(二谷英明)
 第50話「兇弾・神代夏子死す!」
 第51話「凶弾Ⅱ・面影に手錠が光る!」
 初期の特命課は警察内のアウトロー集団という印象が強く、課長自身、盗聴器を仕掛けたり民間人を囮に使ったりと非道な捜査をしているが、二谷の持ち味もあって、極めて知的なエリート集団へと変貌を遂げた。しかし、そこはそれ、日活出身のダンプガイであるからして、キレたら手が付けられない。それがよく分かるのが、このエピソード。ここまで暴走する刑事は、他の番組では見られない。
 船村一平
(大滝秀治)   
 第85話「死刑執行0秒前!」  大滝をキャスティングしたことが、番組成功及び個性獲得の大きな要因である。というわけで、おやっさん主役回でハズレを探す方が難しい。85話で弁護について説く場面、172話で自分の捜査について語る場面等、名台詞も多く、とにかく一挙手一投足から目を離せない。「落としのピンさん」とか言われているわりに「こちとら伊達や酔狂で頭ハゲくらかしてんじゃねぇんだ!」「壊れ物を片付けようか」なんて暴力的な取調べも印象深い。   
 第118話「子供の消えた十字路」
 第127話「裸の街Ⅰ・首のない男!」
 第128話「裸の街Ⅱ・最後の刑事!」
 第172話「乙種蹄状指紋の謎!」
 橘剛
(本郷功次郎) 
 第155話「完全犯罪・350ヤードの凶弾!」  当初は「コロンボみたいな奴」という冴えない造形だったが、この番組の「熱いオヤジ臭」を体現する重要キャラになった。85話「死刑執行0秒前!」での船村の取調べを見つめる視線がすごい。 
 第208話「フォーク連続殺人の謎!」
 桜井哲夫
(藤岡弘)  
 第27話「跳弾 その愛のゆくえ」  当初はエリート中のエリートとして登場、暴走する神代と対立することさえあったが、渡米、帰国後は悪徳刑事まがいのワイルド担当、後にはスケコマシ担当として活躍(準主役としては橘においしいところを持っていかれた気もする)。27話では珍しく弱々しい姿が見られる。131話では橘と対立、両雄の迫力が見もの。  
 第114話「サラ金ジャック・射殺犯桜井刑事!」
 第131話「6000万の美談を狩れ!」
 紅林甚一
(横光克彦) 
 第107話「射殺魔・1000万の笑顔を砕け!」  これといって特徴がなく、極めて地味な紅林がレギュラーにいたことで、他の刑事モノではネタにもされない、どこにでもあるような小さな事件を誠実に捜査していくという路線が生きた。その典型が188話。もちろん、ただの誠実君というわけではなく、107話では桜井と対立して、熱いところも見せた。 
 第188話「プラットホーム転落死事件!」
 叶旬一
(夏夕介) 
 第186話「東京、殺人ゲーム地図!」  初期はノーネクタイに革のベストを着て「桜井よりシャープ」なイメージを打ち出していたが、いつの間にかナイーブな若手になってしまった。第260話「逮捕志願!」なんて、叶でやる話じゃないだろう。というわけで、人情なんて微塵も感じられないエピソードを選んだ。264話は西田健の3大犯人役のひとつ。 
 第264話「白い手袋をした通り魔!」
 高杉陽三
(西田敏行)
 第54話「ナーンチャッテおじさんがいた!」  登場回数が極めて少なく、最終回ではアホなスタッフのせいで回想シーンにも入れてもらえなかったが、初期を支えた名刑事。後に登場する三代目婦警、幹子のいとこなんて設定は何のためにあったのだろう。主役編として楽しめるのは、これくらいしか見当たらないが、脇でグッと光る存在感があり、特に「凶弾」前後編は、高杉がいなくては成立しない展開で、見事の一語。
 吉野竜次
(誠直也)  
 第220話「張込み 閉ざされた唇!」  やはり、吉野には人情モノ、特に(不義の子という設定は当初はなかったようだが)父親的存在との絡みで見せる話が良く似合う。そのラインで、長門裕之演じる蒲生警視とのコンビも秀逸で、特に269話は吉野との心の交流が素晴らしい。アクション路線、人情路線どちらにも対応できた稀有なキャラで、実は真の主役と言っても過言ではない重要な人なのだが、DVDには代表作がほとんど収められていない。是非、吉野セレクションを改めて出してほしい。  
 第261話「ニューナンブ38口径!」
 第269話「窓際警視、投げ込み魔を追う!」
 津上明
(荒木しげる) 
 第90話「ジングルベルと銃声の街!」  若者代表で、最も刑事モノの刑事らしいキャラではあるのだが、番組の「熱いオヤジ臭」のせいで、代表作が少ないのが残念なところ。第122話「痴漢になった警官!」における性欲カミングアウトも忘れがたいが、90話は得意のドラムも披露した傑作。前編で死んでしまうので主役回とは言いがたいが、事件の展開、真相ともに、やはり「殉職」編は傑作。 
 第146話「殉職Ⅰ・津上刑事よ永遠に!」
 第147話「殉職Ⅱ・帰らざる笑顔!」
 滝二郎
(桜木健一)
 第110話「列車大爆破0秒前!」  高杉の路線を引き継ぐべく投入されたのだとは思うが、番組が高杉的存在を必要としなくなっていたのが、この人の不幸だろう。このエピソードは滝主役とは言い切れないものの、あのキャラなしには展開し得ない傑作。
 時田伝吉
(渡辺篤史)
 犬養清志郎
(三ツ木清隆)
  SP「疑惑のXデー・爆破予告1010!」  残念ながら番組自体に勢いがなくなってしまっていたので、最後期レギュラーにはいいところがない。初登場となるスペシャル版では、特命課に批判的なところから、徐々に理解を示していく過程が描かれ興味深い。ついでに白川由美登場編でもある。
 全員      第136話「誘拐1・貯水槽の恐怖!」
 第137話「誘拐Ⅱ・果てしなき追跡!」
 事件主体で描かれるため、特に主役が立てられない回も多い。「誘拐」編は、衝撃的な展開と後味の悪すぎるラストが特筆モノ。ゲストの山本学の演技が光る。
 第160話「復讐Ⅰ・悪魔がくれたバリコン爆弾!」
 第161話「復讐Ⅱ・5億円が舞い散るとき!」
 数ある爆弾モノの中でもサスペンスが最大級の傑作。ラストの大爆発に東映魂を見る。
 第351話「津上刑事の遺言!」  やっていることは「殉職」編と変わらないのだが、レギュラー総出演の豪華さが素晴らしい。
 第418話「少年はなぜ母を殺したか!」  法廷内からカメラが動かない(実はワンカットだけ動く)異色作にして、法廷モノの傑作。後に長坂が書く『都会の森』のプロトタイプと言ってもいいだろう。
 第506話「橘警部・父と子の十字架」
 第507話「桜井警部補・哀愁の十字架」
 第508話「神代警視正・愛と希望の十字架」
 感動の最終回。小さな事件がどんどん大きくなっていく興奮は比類のないもので、早く翌週が来てほしいような、終わっちゃうから来てほしくないような、複雑な感情を抱いたものです。

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