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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

名探偵ホームズ

[出演]広川太一郎、富田耕生、大塚周夫  1984年

君の周りで何か事件が起こったら、ベーカー街まで知らせてくれたまえ

 日本とイタリアによる合作作品。宮崎駿が関わった6本「小さなマーサの大事件!?」、「ミセス・ハドソン人質事件」、「青い紅玉」、「海底の財宝」、「ドーバー海峡の大空中戦!!」、「ねらわれた巨大貯金箱」以外は残念ながらというか当然というかクオリティがかなり落ちていますけれど、それでも良質の番組ですな。お子様には、こういう番組を見せんといかんねぇ。当然お子様以外の方も楽しめますよ。楽しみどころのひとつが広川太一郎。また暴走しております。なんか一言付け加えんと気が済まぬというアドリブ魔王の本領発揮、モリアーティ教授を「あんにゃろ」と呼び、罵倒するときには「おのれ、モリアーティのナスのへた!」と意味不明のフレーズを叫びます。しかし、当然ホームズは名探偵でもあり、知性や優しさを感じさせる演技も抜群で、広川の持ち味を十分に生かした代表作と言っていいのではないでしょうか。また、モリアーティ教授役の大塚周夫が、さすがの演技力で爆笑を誘っており、考えてみれば、この番組の声優はベテランばっかりの贅沢な作品です。

 続けて見ていると、ワトソンの顔色が微妙に薄くなっていたりすることに気付きますが、これは、制作時期の違いによるもの。著作権獲得の交渉を任せたイタリア側の動きが遅かったため、日本側が見切り発車で制作に突入したのですが、日本側の別作品制作が決定したことから6話分で中断、お蔵入りになってしまいました。『風の谷のナウシカ』の併映作品として2本(「青い紅玉」、「海底の財宝」)が選ばれて陽の目を見、制作再開となったのですが、残念ながら宮崎はスタッフから外れました。一番大きく変わったのはモリアーティ教授の部下のスマイリーで、最初は緑色でソラマメそっくりの顔をしていて、ひょろりとした体で頼りないが優しい性格で、兄貴分のトッドと好対照をなしていたのが、茶色い顔になって、トッドと大して変わらない普通の小悪党になってしまった。あれは明らかに改悪で、あんなになってしまっては、「ミセス・ハドソン人質事件」なんてストーリーは成立しない。モリアーティ一味の関係もギスギスしていて雰囲気がよろしくない。最初が日本側の見切り発車の制作だったことを考えれば、このような変更はイタリアの意向を踏まえたものなのかも知れませんが、だとしたらイタ公というのはユーモアを解さない連中だなぁと言わざるを得ませんね。

 それはさておき、テレビに先行して劇場公開されたバージョンも是非見ていただきたい。ホームズの声が違っているのと、音楽が違うのとで全然イメージが違って面白いですよ。でも、当時、コナン・ドイル遺族との著作権権利問題が解決しなかったため、わざわざ「コナン・ドイルの作品とは無関係です」という不自然極まるテロップを入れたり、モリアーティ教授を「モロアッチ」にしたり、レストレード警部を「レストラント」にしたりと名前を微妙に変えたりしていたのがカッコ悪い(ホームズは「シャーベック」と名乗っているように聞こえる。どうせなら「シャードッグ」にしておけば洒落ていたのに)。


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