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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

瓶詰め地獄

[監督]川崎善広 [出演]小倉千夜子、小川美那子、小林ひとみ  1986年

荒唐無稽の楽しさ、バカバカしさを愛する人に捧ぐ

 夢野久作の傑作短編「瓶詰の地獄」を原作にした日活ポルノ映画。私は、一度だけ自主上映で見たのである。件の自主上映はミステリ映画特集ということで、乱歩作品では『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』『盲獣』、『黒蜥蜴』(美輪明宏の方)、夢野作品では本作と『夢野久作の少女地獄』(ちなみに、これも日活ポルノ)、他には『100発100中』『殺人狂時代』などなど今考えても充実したラインナップだったのです。当然、客はミステリ大好きっ子ばっかり。そこで、この『瓶詰め地獄』が上映されたら……場内に響き渡る女の子達の悲鳴! なんと、この映画は夢野久作の原作とはいえ、正真正銘のエロ映画だったのである! ちょっとエッチどころではなく、直球ど真ん中、手加減なしのにっかつポルノだったのである! ミステリだと思って見に来ていた女の子達が映画館の後ろの方で悲鳴をあげるのも無理はない(うひひ)。

 沼岡淳と、フィアンセの小川美那子、淳の妹・小倉千夜子の三人は、淳の亡父(江角英明。ルパン三世の白乾児)の別荘のある離島に向かってモーターボートを走らせていた。父は瓶のコレクターだったらしく、千夜子は書斎で鍵の入ったビール瓶を見つけた。鍵の合う抽斗を開けると、そこには拳銃と日記帖があった。日記には、難波して南海の孤島に漂着した太郎とアヤコの兄妹の近親相姦が綴られていた。千夜子は日記に引きずりこまれていき、自分と兄の関係を想像した。その時、リビングルームで貪り合う淳と美那子の喘ぎ声が聞こえ、千夜子は、あの人とお兄ちゃんがしていると思うと、たまらず、ビール瓶を股間に挿入してオナニーを開始。一方、書斎から洩れる光が気になった淳がドアを開くと、そこでは妹が自慰に枕っていた。千夜子は兄に見られて一層興奮する。淳は日記のことを知っており、二人は互いに求めていることを悟る。その夜、雷が落ちて停電になり、二人はついにこらえきれなくなり……。

 原作は、孤島に置き去りにされた兄妹が海へ流した瓶詰めの手紙を数編並べただけというシンプルな構成に、驚くべき物語が展開されるというもので、個人的には『ドグラ・マグラ』なんかより数段素晴らしく、夢野の最高傑作ではないかと思っているのだけれど、この兄妹に、兄の恋人を付け足すという簡単なアレンジだけで、こんなにエロな映画になるとは、なんて素晴らしいことでしょう。もともとスケベ要素の入っていた原作ではあったものの、瓶でオナりまくるシーンは、さすがにやりすぎで大笑い。しかも、肝心の箇所は、カメラの手前に別の瓶を置いて隠すという徹底ぶりには笑いをかみ殺すことができません。瓶を銃で撃つ海岸のシーンなど、いかにも文学的なような意味のないシーンもありますが、ちょっと目を離すとヤッている映画なので、絶対に飽きることはありません。絶対に! 更に、原作を逸脱しまくったシュールかつ大爆笑のラストシーンは、ちょっと他所では見られない驚愕のビジュアルで、絶対夢に出てきます。ああ、もう一回見たい。


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