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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間

[監督]石井輝男 [出演]吉田輝雄、土方巽、小池朝雄  1969年

キング・オブ・カルト!究極の見世物映画現る

 この物語は、灰色の部屋の中から始まる。隔絶された灰色の部屋。大正13年、秋……「やめろ!俺はキチガイじゃない!俺はキチガイじゃないっ!」……石井輝男作品では、いつも一人だけ真面目な顔をして浮いている吉田輝雄は記憶喪失の医学生。理由も分からず精神病院に監禁され、『吸血鬼ゴケミドロ』でもお馴染み、高英男の看守にいじめられたりしていたが、聞き覚えのある子守歌にひかれて、脱走。歌の主であるサーカスの少女、由美てる子と、輝雄とてる子で「てるてる」ね♪と意気投合したのも束の間、翌日、てる子は殺害され、自らは犯人と疑われて追われる身となる。吉田は、謎を解くべく裏日本に向かう車中で、自分と瓜二つの大金持ちが病没したとの記事を見つけた。ここに何か秘密があると直感した吉田は、由利徹と大泉滉の坊主コンビをだまして蘇生金持ちマンに成りすまし、小畑通子や賀川雪絵と正体がばれないよう禁欲セックスに明け暮れるが、やがて、謎の親父、土方巽が踊り狂いながら支配する島に渡り、恐るべき事実を知ることになる。

 東映異常性愛路線の一つで、知らない人はモグリです、の超有名カルト作品。本編では、「原作『パノラマ島奇談』」とクレジットされているけれど、同じくらいの割合で『孤島の鬼』がブレンドされ、これに『屋根裏の散歩者』だの『人間椅子』だのをふりかけ、とりあえず乱歩なら、なんでもかんでもぶち込んだ闇鍋みたいな映画、ノンストップ乱歩リミックスに仕立て上げています。これを見ずして乱歩を語るなかれ。乱歩映画を大正ロマンの耽美追及だと思っていたら大間違いです。特に、前半の重々しさから一転、暗黒舞踏家、土方巽のトチ狂った演技がスパークする後半はノンストップの展開。突如登場して頼まれてもいないのに勝手に謎を解き、「ハハハ……拳銃の弾は抜いておきましたよ」の名セリフまで吐く京マチ子版『黒蜥蜴』以来の大木実、人間椅子と化して恍惚の表情を浮かべたり、意味もないのに女装して鞭をふるうド変態の小池朝雄と見どころの満漢全席を挟んで、驚天動地、急転直下のクライマックスまで、石井輝男監督の狂った演出から目を離せません。

 我が国では、内容がヤバかったからか、シャム双子の片割れでポスターにもでっかく写っている(でも、メイクのせいで誰だか分からない)近藤正臣が嫌がったからか、念願のビデオ化も直前になってポシャってしまったけれど、先般、海外でDVD化され、御家庭でも安心して鑑賞できるようになりました。なにしろ、それまでは自主上映を捕まえるしかなくて(私は3回捕まえました)、捕まえられないときは、ワイズ出版の日本カルト映画全集1『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』を読むしかなかったんですから、いやぁ、長生きはするもんです。とにかく、死ぬまでに一度は見ておくべき大傑作。特に、上映すれば必ず拍手喝采、スタンディングオベーションのラストシーンは日本映画史に残る名場面ですよ。



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