007は二度死ぬ YOU ONLY LIVE TWICE
［監督］ルイス・ギルバート ［出演］ショーン・コネリー、浜美枝、ドナルド・プレザンス、丹波哲郎 1967年
その迫力！そのサスペンスを盛り上げる恐怖の新兵器！
アメリカとソ連の宇宙船が突如軌道から姿を消すという怪事件が連続して発生。米ソ間が一触即発の状態になるものの、MI6 は妨害ロケットが日本周辺から飛び立っているという情報をつかみ、日本へボンドを派遣。日本の秘密諜報機関長タイガー丹波哲郎と会い、日本南端のアキ島に不気味な事件が続き、怪しい貨物船が現われたことを知る。タイガー丹波の手引きにより、ボンドは日本人漁師に変装、地元民の疑惑をさけるため浜美枝と結婚して潜入捜査を開始。どう見ても日本人じゃないし、余計に目立つと思うのだが……。それはさておき、調査の結果、アキ島の火口湖の底に巨大秘密基地を発見したボンドは、忍者軍団とともに突入を開始する！
原作者イアン・フレミングは、「You only live twice. Once when you're born、 And once when you look death in the face.（人生は二度しかない。生まれた時と、死に直面した時と）」という松尾芭蕉の言葉にインスパイアされたらしいけれど、そんな難しそうな話はどうでもよく、脂の乗り切った面白さを堪能できる快作。毎回、いろんなところでエキゾチックなムードを取り入れるシリーズですが、今回は東京オリンピック直後、高度成長イケイケドンドンの日本が舞台です。いつも話題になるタイトルバックからして日本髪を結った裸女が手を合わせて拝み、お辞儀をしているシルエットというわけの分からん映像でつかみはOK。観光地でもないのに普通に人力車は走っているし、そのくせボンドカー（ボンドは運転していないけれど）は我が国の誇る名車トヨタ2000GTだし、秘密諜報機関との連絡は両国国技館で謎の力士が担当しているし、国宝姫路城では大山倍達や忍者軍団が白昼堂々訓練しているし、勘違いなのかわざとなのかは分からないけれど、これが東洋の神秘、ニッポンだ！という意気込みが感じられて、国辱などという言葉は忘れてしまいます。脚色は『あなたに似た人』でおなじみ、「奇妙な味」の作家ロアルド・ダールです。
そんなわけでシリーズ屈指のバカバカしさ（褒めているのですよ）を誇る本作であるが、巨大な火山基地のセットや、小型一人乗りヘリ、リトルネリーなどの秘密兵器も大活躍、『刑事コロンボ』屈指の名編「別れのワイン」にも出たドナルド・プレザンスが宿敵ブロフェルドとして禿げ頭に詰襟姿で初顔出しして、007の濃いところが存分に味わえる快作となっている。まぁ、ボンドガールについては敢えて触れまい……。『ロシアより愛をこめて』のダニエラ・ビアンキを超えろとまでは言わないが、巨乳とプロポーションだけで顔があれの浜美枝を選ぶとは……。なんでも『キングコング対ゴジラ』を見たスタッフが、浜と若林を、と希望したそうで、どうして007のスタッフがそんな映画を見ていたのかも謎だが、もっと他にも女優はいるのにと悔やまれてなりません。そんなボンドガールに懲りたのか、コネリーは本作をもって降板してしまいます。後に乞われて復帰した『ダイアモンドは永遠に』はどうしようもない駄作ですが、更に10年以上のときを経て出演したシリーズ番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』は、なかなかの傑作。今に通じる渋さ満点のコネリー・ボンドが見られますので是非。