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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

007/トゥモロー・ネバー・ダイ TOMORROW NEVER DIES

[監督]ロジャー・スポティスウッド [出演]ピアース・ブロスナン、ミシェル・ヨー  1998年

ニュー・ジェームズ・ボンド世界を翔ける!

 南シナ海の「公海上」を航行していた英国艦が、領海侵犯じゃねぇかと中国空軍機にイチャモン付けられ撃沈されるが、何故か中国空軍機も撃墜される。緊急電文を受けたばかりの英国防省は大慌て、なのにイギリスの新聞「トゥモロー」が、この大特ダネをすっぱ抜く。実は、情報操作で両国間の戦争を演出し、ぼろ儲けしようというメディア王ジョナサン・プライスが裏で糸を引いていたのだ。調査を命じられたジュディ・デンチは、プライスの背後を探るべくボンドを派遣するが、元カノのテリー・ハッチャーがプライスの嫁になっていてビックリ。こりゃちょうどいいやってんで、情報を引き出すボンドだが、嫁の様子がおかしいと盗聴器を仕掛けていた哀れな夫プライスにバレバレで、姦通罪でお仕置きよとばかりにテリーは殺されてしまうのだった。

 アバンタイトルの、ロシア国境における武器取引マーケットでの大活躍がすごい。撃って撃って撃ちまくり、最後は木端微塵にして終わりという大暴走。前作『ゴールデンアイ』で5代目ボンドに就任したピアース・ブロスナンがノリノリで暴れています。しかし、私は正直言って、ピアース・ブロスナンのボンドが好きではない。4代目ティモシー・ダルトン初登場をリアルタイムで体験したせいか、どうしてもダルトン贔屓になる私なのだが、それにしてもブロスナンは優男すぎないか。初代ショーン・コネリーと3代目ロジャー・ムーアのいいとこ取りをしたキャラクターであることは認めるが、できれば、もう少し骨のある感じの男前をキャスティングしてほしかった。一時はメル・ギブソンも候補に挙がっていたというが、そっちの方が良かったかも知れない。『ゴールデンアイ』はストーリーが辛気臭い上に、突如女性になったMに前世紀の遺物呼ばわりされたり、相変わらずすごい名前の敵ゼニア・オナトップ(ファムケ・ヤンセン)にカニばさみされたりと、あんまり良いところがなく、おまけにボンド・カーがBMWになったのも気に入らない。他所ではどうか知らないけれど、BMWとベンツは関西ではヤクザの乗る車である。センスとしては最低なのである。こんなもんに嬉々として乗るボンドなんか実にイヤだ。

 という具合に、ブロスナン・ボンドに極めて点の辛い私が、何故この映画を紹介するかというと、これはミシェル・ヨーの映画だからである。とにかく史上最強のボンドガール。「強い」という設定のボンドガールは何人もいたけれど、ガチで強いのはこの人だけだろう。ストーリーは、二大国間に戦争を起こそうとする陰謀に立ち向かうボンドということで、米ソの宇宙船を狙った『007は二度死ぬ』、英ソ原潜を狙った『私を愛したスパイ』と同じだ。したがって、ストーリーを追うよりも、純粋にアクションだけを楽しむのに最適な作品なのである。ミシェル・ヨーの華麗なカンフーアクション、ベトナムでのバイク(これもBMW)とヘリのチェイス、敵基地内でのバトルが昔懐かしい感じのラストと見どころ満載。悪役ジョナサン・プライス、殺し屋ヴィンセント・スキャヴェリの好演、更に前作と大違いでかっこいいジュディ・デンチと脇役も光りまくり、ボンドが単なる狂言回しにしか見えないあたりも興味深い。派手になっていく一方のブロスナン・ボンドの中で、観賞に耐えうる唯一の作品と言ってもいいでしょう。


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