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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

女獄門帖 引き裂かれた尼僧

[監督]牧口雄二 [出演]田島はるか、佐藤美鈴、成瀬正、志賀勝、折口亜矢  1977年

あの男に抱かれたのですか……汚らわしいっ!

 年期が明けて、田舎に戻れると喜んでいた飯盛女郎の田島はるかだったが、女衒で股間がサッパリ役立たずの汐路章と包茎の佐藤蛾次郎(ちなみに役名も蛾次郎)に土蔵の中へ連れ込まれ、別の宿場へ移るよう強制される。嫌がるはるかは、馴染み客で東京国税局の影の査察官、小林稔侍と足抜けを図るがあっさり失敗、醜く足掻いた揚句ぶち殺された稔侍を見捨てて一人逃亡。途中、町人姿をした代官所の隠密・成瀬正にかくまってもらったり、握り飯もらったりした礼に使い込んだ体を差し出そうとするも断られたり、差し出しもしていないのに警視庁刑事部長、片桐竜次と野口貴史に好き放題やられまくられたりしながらも、やっとのことで山奥の駆け込み寺・愁月院に辿り着く。愁月院は、三年間辛抱すれば現世の縁を断ち切ってくれるという伝説の尼寺なのだ。

 美形でペチャパイの庵主・折口亜矢と、彼女に寄り添う無口な少女・佐藤美鈴のほかに、派手好みのひろみ麻耶、神経質そうな芹田かおり、デブで大食いの藤ひろ子といった、一癖も二癖もありそう、て言うか癖以外に何もない女達と、不気味な人肉鍋を煮込んでいるアイアンシェフ志賀勝(何故か茶髪で顔は白塗り)が住む寺の実態は、色と欲の男どもに怨み骨髄、寺に踏み込んだ男は哀れな女達の供養のためにぶち殺す女ハングマンの巣窟だったのである。投げ数珠で相手の首を絞めるという必殺技を持つ庵主を元締に、それぞれ蛇と猫をペットにしているレズコンビ麻耶とかおり、何故か湧き出る母乳で相手を溺死させるひろ子といった中村主水も真っ青の仕置人達。最初は恐ろしさのあまり逃げ出そうとしたはるかも、自分をタダで犯しまくった片桐と野口を始末、追ってきた汐路と蛾次郎も辱めてもらい、アヘンで毎晩いい気持ちの庵主とレズって昇天。すっかり仲間入りを果たしたかと思われたが、逃避行中に惚れた成瀬が寺に現れたことから、事態は急変する……。

 出てくる連中が清々しいほどに身勝手な奴ばかりで、特に主人公には一片の感情移入もできないのが素晴らしい。いたいけなガキどもに乞食呼ばわりの上、棒で突かれたり石を投げられたりしながら颯爽と登場する主人公は、とにかく自分のことしか考えておらず、自分を助けてくれた必殺尼寺に反旗を翻すことになったのも、好みの男を助けたいからというだけで、正義もヘチマもあったもんじゃない。結局、惚れた男は無残に殺されるのですが、庵主たちへの殺意をスパークさせるシーンはシュールかつアバンギャルド、そしてチープという唖然呆然の描写になっているのでお見逃しなきよう。後半、単身復讐を開始するのかと思いきや、監禁されていた汐路と蛾次郎を脅して使いまくるという身勝手さ。地味で陰湿に始まった反乱は、深作欣二の『魔界転生』にも匹敵する炎の中での大立ち回りへ展開します。うっかりしていると志賀勝が死んだのに気付かずにラストまで見てしまうエログロ濃縮還元120パーセント、驚愕の69分(この上映時間は狙ってやったのか?)。なお、レンタル店ではアダルトコーナーに置いてあるので要注意です。しかし、こんなに面白い映画を一般に開放しないなんてもったいない話です。同じく牧口雄二監督で、エロくもなければグロくもない『毒婦お伝と首切り浅』もアダルトコーナーに置かれる始末。『玉割り人ゆき』は一般のコーナーなのに。