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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

超人バロム・1

[出演]高野浩幸、飯塚仁樹  1972年

バロムとは正義と友情のエネルギーを表し、ドルゲとは地球の平和を乱す悪を言う。超人バロム・1はバロム・クロスで変身するのだ!

 大宇宙で何千年も戦い続ける二つの力があった。一つは、平和と正義の力であるヒゲの爺さんコプー。もう一つは、悪と呪いの力であるドルゲ。激しく永い戦いの果てにドルゲは地球にコンニチワ、地底のドルゲ洞から人間を自らの分身=悪のエージェントとして利用し、悪の限りを尽くす。ドルゲを追って地球に来たコプーだが、老体にムチ打った長旅のせいでダウン寸前。たまたま出会った2人の少年、白鳥健太郎と木戸猛にドルゲとの戦いを丸投げ。健太郎と猛は、コプーに無理やり渡された「超人バロム・1」に合体変身(バロム・クロス)する能力のせいで、正義のエージェントとして戦う羽目になるのだった。

 変身ヒーローといえば石森章太郎という時代に、あの『ゴルゴ13』のさいとう・たかをが原作を描いていたヒーローもの。原作は少年二人がバロム・クロスするとゴルゴ顔のオッサンに変身して戦うという斬新なもので、さすがにこのまま実写化するわけにはいかず(さいとう・たかを本人が「変身前後の違和感がすごい失敗作」と言っている)、新たに鷹をモチーフにしたマスクが作られたのだが、これが実にカッコいい。石森にも鷹モチーフの『変身忍者 嵐』があるが、剣道の面にいろいろくっ付けた嵐と違って、猛禽類丸出しの怖い表情、さすがさいとう・たかをの面目躍如であり、本邦で1、2を争う優れたデザインだと思う。筋肉むきむきの腕(動きにくかったのか、取り外されたりしていたが)、走るときの「ドッドッドッドッ」という効果音、必殺技バロム爆弾パンチの力強さなど、たとえスーツの退色が酷くて緑→黄緑→ほとんど黄色になったりしてもカッコいいことこの上ない。今では他のヒーローと一括りにされたりするけれど、あの力強いイメージ、友情を前面に押し出した設定は、唯一無二の魅力を放っているのです。再放送で「エージェント」の意味も分からないまま大好きになった私は、ボップのおもちゃ(誰かのお下がり)を放り投げて遊び過ぎ、マッハロッドにならないことに腹を立てて壊してしまったものです。

 そして、半分以上が擬音という手抜き主題歌(作詞は八手三郎)や、体中に不二家のノースキャロライナというキャラメルにそっくりな渦巻き模様を描いた戦闘員アントマンとともに有名なのがドルゲ魔人。そのグロなデザインが子供達の悪夢を誘います。記念すべき第1話のオコゼルゲを筆頭に、フナムシ由来のフランケルゲや子守唄野郎ヤゴゲルゲなど、ショッカーからは見向きもされない地味でマイナーな生物から魔人を作るマニアックなドルゲ。挙句の果てには自らの体の一部からクチビルゲ、ヒャクメルゲ、ノウゲルゲ、ウデゲルゲ、クビゲルゲ、カミゲルゲといった悪のヒロイズムなんてものとは縁のない魔人を作り出します。ドルゲに唇や髪の毛なんてないではないかという野暮なツッコミは抜きにして、この人体魔人シリーズこそが本作最大最高の特色。こんなに気色悪くて生理的な嫌悪感を抱かせる奴らは他の作品では見られません。しかし、卑猥さすら感じさせるデザインがお茶の間に受け入れられなかったのか、ドルゲ君事件のとばっちりで降ろされた室田日出男の呪いか、「このばんぐみにでてくるドルゲというなまえはじっさいのなまえとはかんけいありません」というテロップも空しく、35話という中途半端な回数で終了したのでありました。


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