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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

必殺仕置人

[出演]山崎努、沖雅也、藤田まこと  1973年

男三十過ぎていいカッコしようなんざ落ち目になった証拠よ

 のさばる悪を何とする。天の裁きは待ってはおれぬ。この世の正義もあてにはならぬ。闇に裁いて仕置する。南無阿弥陀仏

 必殺シリーズ第2弾ではあるけれど、第1弾『必殺仕掛人』が池波正太郎の原作付きだったので、テレビのオリジナル作品としては、実質上シリーズ第1作。念仏の鉄、棺桶の錠、八丁堀こと中村主水が、許せぬ悪を仕置きするシリーズの原点にして頂点。世間では、闇の世界を仕切る「寅の会」の存在や、念仏の鉄が再登場し、壮絶な最期を遂げるといった要素でシリーズ第10作『新必殺仕置人』の方が評価が高いようですが、本作には到底及ばない。最終回に至るまでレギュラーは誰も死なないし、ラストもやたら明るいけれど、毎回毎回のテンションの高さたるや普通じゃない。仕置人は暗殺者だった仕掛人とは違い、復讐を稼業にしているので、必ずしも的を殺すことはせず、目を潰したり、犯しながら殺したり、縛りつけて飯を食わさないなどは序の口、発狂させておいて乱心者として処分するとか、侍としての立派な最期を遂げさせないため、切腹を邪魔して殺すとか、半身不随にしたうえ喉も潰して心中の片割れとして晒すなど、やりたい放題のリンチ屋さんです。悪役をとことんまで苦しめ貶め、そして殺すというねちねちとした段取りに、視聴者に与える解放感、カタルシスもマキシマムです。力こそすべて、の世界観が貫かれ、主水のセリフにあるとおり「俺たちゃ悪よ、悪で無頼よ」と、仕置人を、悪人の更に上を行く極悪と位置付け、圧倒的な力でねじ伏せていくハードでワイルドで豪快な活躍が見ものです。

 仕事師としては、とにかく主人公である念仏の鉄がすごい。仕掛人の緒形拳や林与一、山村聰といったメインキャストが、見た目は普通の人だったのに対し、山崎努は完璧に怪人。坊主頭、すっとぼけた雰囲気、にやりと笑う顔といったポイントは緒形と同じなのに、演者が違うと、こうも変わるものかと、俳優の力というものに改めて瞠目させられます。こんな奴に狙われたら絶対に逃れられないという底知れぬ恐怖を呼び起こし、歴代仕事師の中でも最高最強の存在感。コンビを組むのは、熱血無口な沖雅也。突如上空から飛び降りてきて、琉球空手と手製の手槍で、直接関係ない人までバッタバッタと殺しまくります。藤田まことの中村主水の初登場作でもあるのですが、この時は完全な脇役で、登場しないときも多く、すぐに殺したがる鉄と錠を抑えて、まんじゅうを食いながら(当初は下戸で甘党という設定だった)いろいろと策を練る軍師役といったところ。後期ではほのぼのとした中村家も、この頃は見ているこちらが寒気がするほど完全に冷め切っていて、菅井きんや白木万理の目つきも鋭く、笑顔など見られません。主水の冷遇されっぷりは半端ではなく、その代わり、仕置きの際には見事な太刀さばきを披露、後期に見られるようなせこい殺しはやりません(ただし、殺しに参加すること自体は少なく、バックアップに回ることが多い)。

 「仕置き」……法によって処刑することを、江戸時代、こう呼んだ。しかし、ここに言う仕置人とは、法の網をくぐってはびこる悪を裁く 闇の処刑人のことである。ただし、その存在を証明する記録、古文書の類は、一切残っていない。


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