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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

翔べ!必殺うらごろし

[出演]中村敦夫、市原悦子、和田アキ子、火野正平  1978年

殺し屋ではなく、神と天使の物語

 二つの眼を閉じてはならぬ。この世のものとも思われぬ、この世の出来事見るがいい。神の怒りか仏の慈悲か、恨みが呼んだか摩訶不思議。泣き声見捨てておかりょうか。一太刀浴びせて一供養。二太刀浴びせて二供養。合点承知の必殺供養

 シリーズ第14弾にして最大の異色作。写真を見ただけじゃ時代劇だと思えない自由な人たち。摩訶不思議な力を持つ行者の「先生」を中心に、記憶喪失の元殺し屋で、生き別れの子供を捜す「おばさん」、見た目が見た目なんで女扱いされず、世をすねて男として生きてきた「若」、江戸で殺しの斡旋業をしていた「正十」といった、市原悦子以外は、まず江戸時代では存在しえない姿である。導入部は石仏が血の涙を流したとかいうオカルトで、それだけでも異色作であるが、それよりなにより、そもそも裏稼業のお話ではないところが大きな特色。中村敦夫は被害者本人の霊と直取引するから、金銭のやり取りは発生しない。殺られた本人が的を指し示すのだから、下調べなんか必要ない。要するに、この人たちは神様であり天使なのだ。復讐とかではなく天罰なのだ。したがって行為はすべて絶対の正義なので、闇にまぎれる必要はなく、丸太で串刺しにするとか、ひたすら殴るとか、シリーズ史上最も痛そうな殺し技も、悪に報いるにふさわしい残虐な刑罰なのだ。ああ、神の怒りって恐ろしい。と言うよりも、『必殺仕置人』のナレーションにあったような「天の裁きは待ってはおれぬ。この世の正義もあてにはならぬ」世界ではなく、それが中村敦夫であるとはいえ、ちゃんと神様が、天使が、天罰が存在している世界を描いたという点で、最大の異色作なのである。

 このほか、和田アキ子の歌う主題歌が浜田省吾プロデュースだとか、植木等の息子(その昔「ミラーマンの歌」を歌っていた)によるチープな劇伴も聞きどころだが、やっぱり市原悦子の恐怖のきめ台詞に耳を澄ませていただきたい。

<その1>「ちょいと……落としたよぉ、こっち来てごらん……これから落とすんだよ……おまえさんの……命だよぉぉぉっ!!!」(ブスリ!)

<その2>「(道を尋ねられて)この道をずう~っと行くと……地獄へ行くのさぁぁぁっ!!!」(ブスリ!)

<その3>「物識りのお坊さん、いろは数え歌教えとくれ、いろはのいの字は何てぇの……?違うよぉお坊さん、いろはのいの字は、命頂きますの「い」ですよぉぉぉっ!!!」(ブスリ!)

<その4>「このあたりに仏の庄屋様っていう偉い庄屋様がいらっしゃるそうで……ホントにあなた様で……?おかしいねぇ、仏っていうのはねぇ……死んだ人のことを言うんだよぉぉぉっ!!!」(ブスリ!)

 ……これを、あの声でやられるのよ、毎週。全部録音してつなげて聞きたいね。

 超自然現象……それを証明する多くの伝承が、古来より東西にわたって受け継がれている。この一行は、これからもこのような未知の世界への旅を続けるであろう。たとえ、あなたが信じようと信じまいと……


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