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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

必殺渡し人

[出演]高峰三枝子、中村雅俊、渡辺篤史、西崎みどり  1983年

どうだね、映り具合は。あんたの死に顔のさ

 昔から悪の栄えたためしはないと世の例えには言うけれど、どうやらそうではないらしい。山のあなたの国々も悪が栄えていると言う。分からない事ばかりだが、分かっている事ただ一つ。許せぬ悪を消す事だ。この世とあの世の境の場所で、舟を浮かべて待っている、三途の川の渡し人

 江戸のある下町の長屋。ある日、西崎みどりが蘭方女医・高峰三枝子のフルムーン診療所にやってきて堕胎手術を願い出る。みどりは大目付の屋敷に勤める女中であったが、慰み者にされ妊娠したのだった。フルムーンは堕胎手術を拒否するが、見かねた長屋の住人・渡辺篤史はみどりを嫁に迎え、お腹の子も自分の子として育てるとイイ話。一方、これを知った大目付は、スキャンダル隠しのため、みどりを捕縛、拷問にかける。結果、みどりは流産し記憶喪失、とばっちりで渡辺の母も死亡。キレた渡辺は敵討ちをしようとするが、このままでは無駄死にだと隣人で鏡研ぎ職人の中村雅俊に止められる。中村は渡辺の復讐の件をフルムーンに相談する。高峰も中村も、ともに凄腕の渡し人だったのだ。2人の会話を盗み聞きしていた渡辺も仲間入りし、チーム最初の仕事が始まる。

 シリーズ第20作。シリーズ後期は主水主役の仕事人シリーズと、藤田まこと休養期間中の1クールの旅物というパターンが出来上がっていましたが、これは久々に江戸を舞台にした非主水もの。まず、草笛光子、山田五十鈴、京マチ子に次ぐ女元締に高峰三枝子を担ぎ出しました。ただ、貫録以外に特徴がなく、女元締としては弱いキャラクターで終わってしまいました。更に永遠の青春スター、中村雅俊も、殺し屋らしくないという点では大正解だったものの、あの垂れ目で迫られても全然怖くなく、むしろ女房役の藤山直美との掛け合いの方が見どころでしょう。この夫婦に関しては、中村が凄腕の渡し人だったがために、人の親になることをためらい、藤山直美の夜のおねだりに応えられないというシリアスな設定や、愛するが故、ともに追われる身となることを避けるため直美を置いて江戸を去るという、第5作『必殺必中仕事屋稼業』を髣髴させるラスト(親しい人たちがみんないなくなり、ひとり残された直美の演技が素晴らしい)、この時期乱発された、ぬるい解散パターンとは一味違う最終回など、本作を名作たらしめる名シーンを生み出しています。

 そして、渡辺篤史が、この度めでたくパシリから殺し屋に昇格です。普段は長屋でお宅訪問をしていますが、素手で腸をつかんでねじ切るという荒業を使います。しかも、懐かしのレントゲン映像が復活、腸をねじる前に肋骨をポロンポロンポロン♪と鳴らすという素人とは思えない遊び心を披露、主水のパシリ時代の鬱憤を晴らして楽しそうです。忘れちゃならないのは西崎みどり。シリーズ第4作『暗闇仕留人』でシリーズ最大のヒット主題歌「旅愁」を歌ったときは14歳でしたが、第16作『必殺仕舞人』以降、第24作『必殺橋掛人』までの非主水シリーズ常連となり、後期における最大の功労者となりました。本作出演時点では23歳。可愛くてキレイやねぇ。『橋掛人』の挿入歌「もどり道」は名曲。あ、本作の主題歌「瞬間(ひととき)の愛」(中村雅俊)も名曲です。


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