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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

コレクター THE COLLECTOR

[監督]ウィリアム・ワイラー [出演]テレンス・スタンプ、サマンサ・エッガー  1965年

同じく蝶コレクターだった岸田森が吹き替えていた

 警察庁広域重要指定117号事件、通称「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」。1988年から1989年にかけて東京都北西部及び埼玉県南西部で発生。被害者は、4歳から7歳の女児。犯人は、宮崎勤。1962年生まれ、事件発生時26歳。宮崎が「5,763本もの実写ドラマなどを撮影したビデオテープ」を持っていて、マスコミが、わざと特撮ドラマを集めて偏向報道したせいで、罪のないオタクが迫害されまくった。ところで、事件の詳細が明らかになるにつれ、マスコミは、宮崎を「現代のテレンス・スタンプ」と呼んだ。

 銀行に勤めるテレンス・スタンプは、友達なんか全然おらず、ひとりで蝶を集めるのが趣味という男。つかまえた蝶をクロロフォルムで殺すとき、忘我の境地で、うっ!どぴゅっ!みたいな男だった。あるとき、グリーンジャンボ宝くじで大金を握った彼は、郊外に地下室のある大きな古い一軒家を買った。そして、美術学校に通うサマンサ・エッガーを誘拐し、地下室に監禁する。スタンプは、サマンサを犯そうというのでもなく、サマンサの家族に身代金を要求するでもなく、ただサマンサの望みを叶えようと張り切っちゃうだけ。欲しがるものは何でも与えるが、決して監視の目はゆるめないスタンプ。絶えず逃げる努力を止めないサマンサ。この男は一体、何をしたいのだろうか?

 あの頃のバッシングはどこへやら、今やホラー全盛であるが、あんなものは単なるこけおどしに過ぎない。せいぜい、隣の女の子に抱きついてもらうためのものである。本作は、突然後ろからギャーッとか化物が出てきてギャーッとか血しぶきあげまくってギャーッとか、そういうものではない。とても静かな映画である。何か音が鳴っていた記憶がないほどである。こういうものが本当に怖い。蝶の収集にしか興味のなかった男が、一人の女性に恋をする。彼の愛し方は蝶にも人間にも同じように……。ああ怖い。じわじわ怖い。淡々と怖い。人間として共有できる感情なんて、単なる思い込みに過ぎないのだ、ということをさらけ出してしまったところが怖い。でも本当に怖いのは何の救いもないラストシーンで、リアルタイムで見た人たちは衝撃を受けたと思う。今、自分の隣にいる人が、こういう人かもしれないのだ。いや、自分自身が、こういう人かもしれないのだ。そんな中で、我々は今日を生きていかなければならないのである。だからこそ、23年も経って「現代のテレンス・スタンプ」という言葉が生きていたのだ。



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