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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

セックス・チェック 第二の性

[監督]増村保造 [出演]安田道代、緒形拳  1968年

エロを期待すると裏切られる野獣の世界

 昔は、こういう、ちょっとスケベなタイトルの映画をよく夜中にやっていたものです。ビデオなんてなかった時代ですから、子供たちは親の目を盗んで、音量をギリギリまで下げてテレビにかじりついていたのです。夜中とは、そういうもので、まだ深夜放送が、いかがわしい雰囲気をまとっていた頃ですね。まぁ、今でも少しはそんな空気が残っていますけれど、コンビニエンスストアやテレビショッピングの台頭によって、怪しい雰囲気はかなり払拭されてしまいました。そんなわけで、テレビで映画を見るなら深夜枠ですよ。夜9時からの水曜ロードショーだの日曜洋画劇場だのじゃダメです。で、この映画も深夜枠で見たのですが、なんだか変な映画です。先に言っておきますが、タイトルから想像されるようなエロな映画ではありません。

 名スプリンターと謳われながら戦争でオリンピック出場の夢を断たれた緒形拳は、キャバレーホステスの情夫になったり、選手時代の同期の妻・小川真由美を強姦したりと自堕落な生活を送っていた。ある日、バスケットボール部を退部処分になった安田道代(あんまり可愛くもなけりゃキレイでもないあたりがリアル)に陸上短距離100mの素質を見いだした緒形は、安田に「お前には女を捨ててもらう」と、どこかで聞いたようなセリフをかましてコーチにハッスル。その指導に従い、毎朝ひげ剃りしたりなんかして男になり切ろうと努めていた安田だが、予選会のセックスチェックで、半陰陽と診断され、ホントに女を捨ててしまって元も子もない状態に。緒形は、「女の体がありゃいいんだろ」と安田に×××……。

 セックスチェックなんてものの存在を、この映画で初めて知りましたが、ナニをナニすると、めでたく女と診断されたものの、走りは遅くなっちゃった、というストーリーは、最後に「ちゃんちゃん♪」という音が被らなかったのが不思議なくらいの相当バカバカしいものです。また、この主役の安田道代が、そりゃセックスチェックで男と診断されるだけのことはあると納得させるほど色気のないこと夥しいので、まぁ、ある意味変な興奮を呼び起こしたりしないでもないわけですが、こんなタイトルでいたいけな少年を騙しちゃいけませんな(いたいけな少年には小川真由美の濃さも毒気が強すぎる)。今なら、やれ人権だの性同一性障害だの、ややこしい問題がまとわりついて作れないだろうな、昔はおおらかだったのだな(それとも社会派だということで押し通したのだろうか。あんなオチなのに)。ところで、この映画、緒形拳が変なんです。増村保造監督の激しい演出に触発されたのか何なのか、特に変わったことをやっているわけじゃないし、緒形自身に空間を歪ませるほどの個性があるわけでもないのですが、なんだか変な空気が漂います。普通に演技しているだけなのに、普通の世界との間に微妙な違和感を覚えさせる俳優ですね。独特の個性です。シチューばっかり食っている出来の悪い息子とは大違いです。


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