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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形

[監督]山本迪夫 [出演]小林夕岐子、松尾嘉代、中尾彬  1970年

血を吸っていたのは誰でしょう?

 半年ぶりに帰国した中村敦夫は、よりにもよって嵐の夜に婚約者の小林夕岐子に会いに行ったきり、一週間以上も何の音沙汰もない。不審に思った妹の松尾嘉代は、兄の消息を訪ね、恋人の中尾彬とともに蓼科山中の婚約者の家を訪れるが、母親の南風洋子から、夕岐子は車の事故で死んでいること、それを聞いた兄は「あっしにゃ、かかわりのねぇこって」と既に帰ってしまったことをクールに知らされる。しかし、疑惑を抱いた嘉代は、よせばいいのに調査を開始。挙句の果てに、医師の宇佐美淳也に監禁されてしまう。その頃、中尾は夕岐子の墓を暴くが、棺の中には飛び出す人形が置いてあるだけだった。ビックリして逃げた墓暴きのお手伝いさんがブチ殺され、実体を見せずに走り去る白い影。その影を追って屋敷に踏み込んだ中尾の耳に嘉代の悲鳴がこだまする。果たして白い影の正体は? 中村敦夫の消息と、松尾嘉代の運命は?

 東宝の「血を吸う」シリーズ第1弾。とは言うものの、第2弾『呪いの館 血を吸う眼』や第3弾『血を吸う薔薇』とのつながりはないし(シリーズ3作ともにストーリー上のつながりはない)、日本最高の吸血鬼スター岸田森が出ているわけでもない。そもそも、この映画には、喉を切り裂く殺人鬼は出ていても、吸血鬼は出ていないという致命的な問題があって、看板に偽りありなのですが、そんな些細な(些細か?)ことはどうでもよいほどの傑作なのです。日本映画でありながら、じめじめした「怪談」映画ではなく、「ホラー」映画の雰囲気を見事に備えており、山本迪夫監督のセンス溢れる演出は、さすが日本のテレンス・フィッシャー(ハマーフィルムでドラキュラやフランケンシュタインの映画を撮りまくって、ピーター・カッシング、クリストファー・リーと共にホラー映画の黄金トリオと称された映画監督)と呼ばれるだけのことはあります。

 また、この手の映画は、「怖い」というのもさることながら、「美しい」「哀しい」という要素も非常に重要で、この作品には、ちゃんと、その三拍子が揃っています。それを体現して余りある小林夕岐子の美しさは尋常ではありません。『ウルトラセブン』の第9話「アンドロイド0指令」に登場するアンドロイド少女ゼロワン役でもいかんなく発揮された人間離れした美貌で、悲劇のヒロインを見事に演じるだけでなく、作品のカラーも決定づけていて、この人をキャスティングできた段階で、作品の成功は約束されたといっても過言ではないでしょう。岸田森という強烈なキャラクターがいなくても、吸血鬼映画は成立するということを証明した傑作です。他にも、下男役の高品格や、医師役の宇佐美淳也(この役のせいで『ミラーマン』の御手洗博士が怪しく見えて仕方がない)といった絶妙の怪しさを備えたキャスティング、中村敦夫と松尾嘉代が兄妹だったり、中尾彬と松尾嘉代が恋人同士だったりといった普通ではない設定など、配役の妙にも注目です。それにしても、中尾彬と松尾嘉代が恋人同士というのは、なんとも濃いキャスティングですね。当時の中尾は爽やか二枚目路線だったとはいえ、ただでさえ濃厚な二人が、ウミウシの生殖行為みたいに(って見たことないけど)濃厚にラブシーンなど演じてくれていたら、せっかくの小林夕岐子の美貌も消し飛んで、別の意味で恐怖映画として完成を見たのかも知れませんが、個人的には、そんな映画は頼まれても見たくないです。こんなカップルとダブルデートなんて想像もしたくないですね。



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