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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

八つ墓村

[監督]野村芳太郎 [出演]萩原健一、小川真由美、山崎努、渥美清  1977年

祟りじゃ〜!八つ墓明神の祟りじゃ〜!

 八つ墓村……永禄九年、落武者である夏八木勲ら8名は、この村に流れ着いたが、村民に欺し討ちにあう。落武者1号田中邦衛は首チョンパ、残る2号から8号も、末代まで崇ってやると呪いの言葉を吐きながら死んだ。落武者謀殺の中心人物であった村総代の橋本功は莫大な山林の権利を与えられたが、ある日突如発狂、村民7人を斬殺、自分で首チョンパして果てた。村人は落武者の崇を恐れ、夏八木ら8人の屍骸を改めて丁重に葬り祠をたてたことから、村は八つ墓村と呼ばれるようになったという。そんな橋本功の子孫であると知らされたショーケンが、生れ故郷八つ墓村に向かうと同時に、連続殺人の幕が切って落とされた!

 何度も何度も映像化される『八つ墓村』の、おそらくこれが最高の映画。横溝正史作品の映画化といえば市川崑というのが定番ですが、その市川による映画化(1996年)はキャストが最低で見るに耐えんもんでしたなぁ。豊川悦司はどうしようもないし、なによりも浅野ゆう子の色気というか水気というか、そういう潤いの無さというのはダメージヘアもビックリである。あんなデクノボー女を連れてきた段階で、映画の格はガタガタに落ちたわね。その点、この野村芳太郎版で同じ役を演じた小川真由美ってのは、どうでしょう。当時既に38歳になっていた小川の毒々しいまでの色気、水気。いや、毒水そのものから発せられる湿気というのは熱帯雨林よりキツイのである(行ったことないけど)。桜の舞い散る中で村人を殺してまわる山崎努より濃いというのは、ただごとではないぞ。長くて重くて暗いミステリー映画を作ることにかけては定評のある野村監督作品なのに、一秒たりとも目が離せないのは、やっぱり華はないけど異様に濃いキャストのおかげ。そういえば、野村監督の他の作品(『配達されない三通の手紙』とか『砂の器』とか)もキャスティングで持っているのが多いな。

 そして、もうひとつの成功の鍵は、原作を無視しまくったストーリー展開にある。なにしろ、原作のミステリーとしてのキモ(村内の同じ立場の人間の片方が殺されるという殺人計画、そして、その乗っ取りとか)や犯行動機に関わる重要な登場人物を完全に削っちゃったどころか、「祟りの伝承を利用した連続殺人」というプロットを「とにかく祟られて祟られて祟られまくる話」に変えて完全にオカルト映画にしちゃったのだから、これは「日本の古い体質(怨念とか因習とか)が西洋(論理とか科学とか)によって打ち砕かれることの光と影」を描き続けた横溝に対する冒涜である……てな、固いことは言いませんけど、しかし、横溝作品の本質を歪めて世間に広めるのに大きな役割を果たしたのは間違いないでしょう。そんな脚本を書いたのは『愛の陽炎』の、そして『幻の湖』のキチガイ脚本家、橋本忍。さもありなん。



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