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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

金田一耕助の冒険

[監督]大林宣彦 [出演]古谷一行、田中邦衛、熊谷美由紀  1979年

さようなら、金田一耕助

 金田一耕助役者といえば、映画なら石坂浩二、テレビなら古谷一行のイメージが強いだろうが、演じた数ではダントツで古谷一行である。なにしろ1944年(昭和19年)生まれの61歳(2005年時点)で、まだ金田一を演じているのである。64歳で『犬神家の一族』のリメイクに出た石坂もすごいが、この人が『病院坂の首縊りの家』以来27年ぶりであるのに対し、古谷はコンスタントに作品に登場し続けているのだ。初めて金田一を演じたのは、石坂金田一初登場の翌年、1977年。「横溝正史シリーズ」と銘打ち、作品によって何週間かにわたって放送されていたが、この頃は古谷も33歳と若く、髪はボサボサどころか、ものすごくオイリーでアブラギッシュなロン毛、フケなんて絶対飛ばないほどのしっとり(て言うかべとべと)ヘアー。不潔さ、という点では日本一の金田一役者であろう。おまけに意外にクールでドライな性格付けは、実は原作に一番近いんじゃないかと思われる。そんな古谷の唯一の劇場版が本作である。

 今や映画にテレビに文庫本にと大ヒットを飛ばし、一躍日本の大スターと化した金田一耕助は、盟友の等々力警部とともにグラビアやCMの撮影に励んでいた。そんなある日、金田一は美術品専門の窃盗団に拉致されてしまう。その女首領、熊谷美由紀は金田一の大ファンだったが、過去に金田一が関わった事件である「瞳の中の女」事件が未解決なのに納得がいかない。事件の重要参考物である「不二子像」の首を盗み出した美由紀は、それを元に事件を解決するよう要求する……。

 実は、あらすじの説明など空しくなるだけのパロディ映画。角川春樹事務所としては前年の『犬神家の一族』、半年前の『悪魔が来りて笛を吹く』に続く3作目で、最早パロディを持ってくるセンスがすごい。「血を吸う」シリーズのドラキャラ役で岸田森が、『瞳の中の訪問者』役で峰岸徹が現れるし、『人間の証明』の岡田茉莉子の頭に麦わら帽子が被さったり、『白昼の死角』の夏木勲が「狼は生きろ、ブスは死ね」と言ったりする。挙句の果てには横溝正史御大が「こんな映画だけには出たくなかった」(『悪魔が来りて〜』のコピーのパロディ)と友情出演してしまう。異様に豪華な出演陣(萬屋錦之介の真似をさせられる東千代之介、「瞳の中の女」事件での金田一、等々力コンビとして三船敏郎、加藤武の物真似付き三橋達也のほか、志穂美悦子、斎藤とも子、檀ふみ、笹沢左保、高木彬光、角川春樹、中尾彬金田一『本陣殺人事件』を撮った高林陽一が登場)にしょうもないことをさせる『カジノロワイヤル』もどきで、正直言ってデタラメで面白味も少なくテンポも悪いし、映画としては失敗作と断言してよろしいと思うのだが、妙に金田一の核心を突いているところがあって見逃せない。事件と聞くと「誰か死んでるんでしょ」と死体を期待して現われるところは、原作で「何か面白いことありませんか」と警察にやってくる姿そのものだし、「次々と人が殺されていくのに、全員死ぬまで事件を解決できない」ことを揶揄された金田一が切々と語る言い訳は、ファン納得の名セリフだろう(ダイアローグライターはつかこうへい)。これが聞けるというだけで、本作の存在価値はある。そしてラストには不覚にも涙してしまうのだ。

 「大体、事件ってのは一から十までキッカリ納まるところへ納まるってもんじゃないですよ、現実には。どうしたって、矛盾が後に残るもんなんですよね。それをワンパターンだって言われりゃ、立つ瀬ありませんよ。日本の犯罪ってのは、どうしたって家族制度や血の問題が絡んできちまうんだ。それは日本の貧しさなんですよね。探偵ってのはね、一つの事件に対して、怒りや慣りを持っちゃいけないもんなんですよ。一つの殺人から、どう拡がっていくだろう?そして、この殺人が、もう一つの殺人を生むんじゃないかしら?そう考えることが楽しいんですよね。私だってね、事件の途中で犯人を予測することはできるんだ。でもね、でも、むやみに犯行を阻止すべきじゃないって気がするんですよ。事件ってのは一人歩きしますからね。ただ、それを温かく見守ってやる気持ちが必要だと思うんですよ。一つの殺人に触発されて、もう一つの殺人が起こる。犯罪ってのは成長しますからね。それに私、日本の、おどろおどろしい殺人って好きなんですよ。毛唐みたいにピストルバンバン撃ち合う「明日の殺人」と違って、日本の殺人は、過去の魑魅魍魎を祓い捨てるための殺人なんですよ。人を殺せば殺すほど、絶望的になっていきますもんね、日本の犯人は。世界中どこ探したって私一人ですよ。犯人の気持ちを思いやる探偵なんてのはね。」



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