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ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

釈迦

[監督]三隅研次 [出演]本郷功次郎、チエリト・ソリス、勝新太郎  1961年

日本初、70ミリスーパーテクニラマ超大作!総天然色、156分!

 ここは、インド北方の国にあるカピラ城。ある日、ピープロ独特の安っぽいアニメ合成の光と花と鳥とともに、「天上天下唯我独尊」とシッダ太子が誕生した。すくすく育った太子だったが、大きくなって本郷功次郎の顔になってから、自らの恵まれまくった境遇と奴隷や賤民の身の上とのあまりの違いに人生の苦悩を持ってしまった。『特捜最前線』でお馴染み、暑苦しくてたまらない顔で悩みまくった末、ある夜、太子は心の安らぎと人生の悟りの道を得るために、最愛の美人妻ヤショダラー姫(フィリピンスターのチエリト・ソリス……誰?)を捨てて禅定の地を求めて城を出た。……確か、本当は子どもができたと知って「この子は知恵の光明をさえぎる、光を蝕む悪魔「蝕魔(ラーフラ。ちなみに「日食」の語源である)」だ!」と名付けて家を出た(これが「出家」)はずだが。「悪魔、ここに誕生す」丸出しだから、変えちゃったのかしら。それにしても、やるだけやっといて、できたと知ったら悪魔と名付けて捨てていくというのは極悪非道もいいところ。それはともかく、6年の間、変な森で変な誘惑に対抗するという変な苦行を続けたシッダ太子は、一切の怒りと憎しみを忘れ、何の説明もなく現れる村の女サヤ(実は帝釈天ということで、踊りまくって巨大化する京マチ子)の介添により遂に悟りを開いた。太子は仏陀として貧乏臭く生まれ変わったのだ。仏陀のもとには、尊き法の教を乞う人達が全国から集ってきた。そんな頃、初代レインボーマン、ではなくダイバダッタ(シッダ太子の従兄弟)こと勝新太郎は、嫁取りの戦いでシッダに取られたヤショダラー姫をねっとりと犯してウハウハだったが、仏陀の高い噂を聞くとムカムカしちゃってコンチキショー!になっちゃったので、胡散臭さ爆裂のシュラダ行者のもとで神道力を授かるや、敢然として仏陀への挑戦を開始した。仏教対バラモン、世紀の対決!戦え!レインボーマン!(←違う)。

 もっと辛気臭い話だと思っていましたが、とんでもない、ぐいぐい引き込まれるんですわ、これが。大映の超大作でありながら、「勝」と「雷」を掛け合わせて「カツライス」と呼ばれるまでになった大映の「二枚看板」勝新太郎と市川雷蔵を差し置いて、本郷功次郎が主演なのは何故だ?という疑問はありますが(まぁ、勝新は出づっぱりで実質主役みたいなもんですけど)、約2時間半の長尺を一気に見せる演出は大したもの。釈迦が悟りを開くまでを描いた後は、観客の体調を考慮して、本郷は暑苦しい顔を見せず、声と影だけになります。過食症で食いしん坊の夜叉(鬼子母神だな)の話(必殺シリーズしか知らない人には絶対誰だか分からない山田五十鈴)、生臭い理由で目を潰された王子の話(『炎上』系の演技が光る市川雷蔵、中村鴈治郎、山本富士子、月丘夢路)、出生の秘密に悩むという後の大映ドラマの先駆けのバカ王子の話(川口浩、中村玉緒、杉村春子)、仏陀を信じたばっかりに手酷く迫害される可哀想な弟子の話(根上淳、川崎敬三)、ろうそく持ってウロウロする危なっかしくて薄汚い乞食婆の話(北林谷栄……薄汚くもなく婆でもない北林なんて見たことないが)、そして大スペクタクルでお送りするダイバダッタの逆襲(東野英治郎)とオムニバス形式でダレずにテンポ良く見られます。最後のバラモン大神殿崩壊のクライマックスも迫力満点。キャストは前述のとおり大映オールスター(他にもスゴイ役者がぞろぞろ)で豪華絢爛。その中に、王子様である本郷に涼風を送るべく、大汗かいてバカデカイ扇を振る召使達がいるんですが、そのうちの一人に市田ひろみが混じっています。ただでさえ暑苦しくて空気抵抗の大きい顔が、汗だくになっているアップがあります。見たいか、日本初の70ミリ映画の大画面でそんな顔。て言うか、アップにしてもらうほどの女優じゃねぇだろ、おばはん。そんな狂ったカットを撮った監督は『子連れ狼』『座頭市』『眠狂四郎』だと大活躍の三隅研次、音楽はお馴染み伊福部昭と大作に相応しい陣容に、特撮には鷺巣富雄が参加していて、ピープロ風味で程よいチープ感を演出しています。もう、とにかく「スゴイ映画だ」としか言えない。お釈迦さんの話なのに、宗教臭さなんか全然感じさせないエンタテインメント性の高さ。まさに日本映画史上に燦然と輝く一大傑作。これを見ずして日本映画は語れない。濃いぞ!ちなみにKBS京都は、この映画をノーカット、しかもCMを一度挟んだだけで放送したのである。つくづく狂っていて素晴らしい局である。



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