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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

a groovy kind of Love~恋はごきげん

PARIS BLUE  1993年

この女性ボーカルを埋もれさせておくのは日本音楽界の一大損失である

 谷口實希(作詞とボーカル)と日比野信午(作曲とコーラス)という男女二人組の、いわゆる「渋谷系」のユニット、paris blue。その昔、テレビ朝日系の夜中の音楽番組(確か『金曜玉手箱』とかなんとか)で渋谷系特集をやったときに、注目のユニットとして登場したのをたまたま見たのです。そのとき披露されたのが、このアルバムの1曲目、シングルカットもされた「雨が降る」だったのです。私はイントロだけでメロメロになりましたよ。こんなに美しくて切なくて素晴らしい曲を、私は聞いたことがありません。とにかく、この1曲だけでも、このユニットは後世に名を残していいと思いました。

 「渋谷系」と一口に言っても、いろんな曲調があるわけで、「都会的でオシャレ」っていうくらいしか共通項がないのが実態なのですが(そもそも「渋谷」と言われても、具体的なイメージがまったく湧かない京都人の私)、80年代末期、90年代初頭を席巻した、非常に魅力的なカテゴリで、私も、すっかり魅了されてしまいました。やっぱり、代表格のピチカート・ファイヴが衝撃的でしたね。音楽もさることながら、ヴィジュアル面でも、実にオシャレでした。

 で、このparis blueですが、ピチカート・ファイヴなんかに比べると、実になんとも普通です(特に見た目)。先鋭的なところはなく、極めて上質なポップスと言ったところです。そんなparis blueが、他のユニットと一線を画すのは、なんと言っても、谷口實希の甘くて軽くて癒し系の声。反則スレスレ。一日中、隣で囁いていてほしい。得がたい逸材です。この声で、日比野信午によるセンスのいい曲を歌いまくってくれたのですが、一部の目利きを興奮させたものの、結局ヒットを飛ばすこともなく、鳴かず飛ばずでぱっとしませんでした。私の好むユニットは皆売れない……。タイアップとかがなきゃ、辛いのかなぁ。挙句の果てには活動停止。1992年デビュー、1996年活動休止という、実に短い(しかしながら、中身は濃かったと信じる)命でした。やっぱり中山秀征となぎら健壱なんていう中途半端なコンビが司会をしている番組に出てしまったのがイケナカッタのでしょうか?まぁ、当時は今ほど歌番組なんかなかった冬の時代でしたし、そんな番組でも出られただけマシだったのかも知れませんが(考えてみりゃ「渋谷系特集」なんて、ニクイ番組ではある)、実に惜しいことです。今は、どこで何をしているんでしょうか。あの声をもう一度聞きたいものだと思います。


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