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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

SOUL ZODIAC

THE NAT ADDERLEY SEXTET  1972年録音 CAPITOL原盤

マー・プレン・パリジャットの愛のタロット

 以前はわりとラジオを聞いていたものだった。当時はFM802もFM京都(αステーション)も開局していなかったし、京都で聞けるFM局はNHKとFM大阪だけだった。というわけで、私はもっぱらFM大阪で『JET STREAM』(城達也が渋い声で「リン・リン・ダイヤル」と言うのが笑えた)や『渡辺貞夫のマイ・ディア・ライフ』を聞いていた。AMは当然KBS京都で(と言うのは、他局は雑音がひどくて聞けたものじゃなかったから)、つボイノリオの『ハイヤングKYOTO』(水曜日)と笑福亭鶴光の『オールナイトニッポン』(土曜日)が二大巨頭。FMではジャズ、イージーリスニングをゆったり聞き、AMでは下ネタを楽しむという実に分かりやすい聞き方をしていたわけだ。それが中学、高校生の頃だったけれど、番組が終了してしまうと、新たな魅力を見いだせず(FMは開局ラッシュを迎えていたが、1989年開局のFM802はやかましすぎ、1991年開局のFM京都は静かすぎ(今では当初のコンセプトをかなぐり捨てて、他局と変わらない内容になっている)て肌に合わなかった)、結局ラジオからは遠ざかることになってしまった。今では、車を運転するときに何となく流している程度である。

 以前はラジオにかじりついて全身を耳にして聞いていた。土曜の夜に鶴光を聞こうと胸をわくわくさせて待機していると、恐ろしげなBGMとともに始まる番組があった。その名も『マー・プレン・パリジャットの愛のタロット』。「愛の」と言うからには恋愛運なんかを占っていたのだろうけれど(中身はまるで覚えていない)、星座ごとに用意されたBGMが民族音楽まがいの曲やひたすら水滴の音などの先鋭的なアンビエント丸出し、語りも占いというより呪いに近いような雰囲気で、土曜の深夜に異常な恐怖空間を現出していたのだった。かなり怖くて気持ち悪かったけれど、私は3月9日、魚座の生まれなので、最後まで聞かないと運勢が分からない(めざましテレビの「今日の占いCountDown」は何故か魚座を目の敵にしているので、早く出かけなきゃいけないのを我慢して最後まで見ていたら、最悪の運勢だったということが多くて腹立たしいことこの上ない)し、これを越さなきゃチャック・ベリーの「Too Much Monkey Business」で始まる「この歌はこんな風に聞こえる」も聞けないので、蛇に睨まれた蛙のように他局に変える動きも封じられて辛抱して聞いていたのだ。このアルバムを聞くと、そんな恐ろしいラジオ番組を思い出すのである。

 実兄キャノンボール・アダレイがプロデュースしたナット・アダレイ名義のアルバム。ナット・アダレイといえば自作の「ワークソング」が有名なファンキー・ジャズ・コルネット奏者だが、本作では12星座をモチーフに、ラジオDJとして有名だったリック・ホームズの渋い声のナレーションをフィーチャーし、エレピやギターもサイケデリックに大活躍するスピリチュアル・ジャズファンクに取り組んでいる。て言うか、ジャズなんて括りで聞かずに、妙な催眠効果が得られる不思議盤として一家に一枚常備していただきたい。これさえあれば脱法ドラッグも何もいらないから。


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