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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

LIBERATION

KARSH KALE  2003年

タブラでテクノ!?

 カーシュ・カーレイは、インド系のイギリス人でニューヨーク育ちのタブラ奏者です。タブラというのは北インドを中心に発達した楽器で、小さな太鼓ふたつでできています。高音と低音のふたつの太鼓を、指や手のひらで叩いて音を出します。やっぱり私はアジアとかエスニックとかそーゆーものに強烈に惹かれるわけですね。普段なかなか耳にしない音ですし、何か、体の奥の方の中心を揺り動かすものが感じられますからね。

 でも、我が儘を言うようですが、単なる民俗音楽ってのはイヤなんですよ。細野晴臣に騙された経験がありますものでね。というのは、その昔、細野が監修した民俗音楽全集みたいな奴を通販で買ったんですが、中身は現地で録ってきましたってなことで、ただの現地人の演奏とか歌とかが入ってるだけ。退屈この上なし。と言うか、多分、細野の興味の方向とは大筋で同じなんですけど、そこまで原点に立ち返らんでええやろ、とか思うんですね。なんぼなんでも道端で録音した現地の少女の歌をありがたがる人はいないでしょ、普通。録音して何かの素材にするというのならまだしも、何の加工もせず、「素朴!」とか言うて売られてもねぇ。そりゃ素朴は素朴なんでしょうけれども、もぉちょっと何とかなってるものだと思って金を出したんですよ。元YMOの細野の監修なんですから、そういう期待を抱くこと自体は筋違いじゃないと思うんですけどねぇ。

 というわけで、このアルバム。「そういう期待」に応えてくれる好盤です。俺的にはど真ん中に来ましたね。アジアでエスニックで、それでいてエレクトロニックでクラブ~な感じ。カーシュ・カーレイという人は、エイジアン・マッシブのリーダー的な存在なのだそうです。エイジアン・マッシブとは、南アジア系のアーティストが中心となって、南アジアの伝統的な音楽とエレクトロ・ミュージック(ブレイクビーツやドラムンベース)をミックスしたミクスチャー・ムーブメントのことで、カーレイ曰く、「エレクトロニックな音楽ってプログラムが基本だろ。タブラの演奏法はそれに近いんだよ。タブラとエレクトロニックな音楽は技術的な面がとても似ているんだ。だからテクノとタブラの演奏はよく合うんだ」そうです。そんなわけで、このアルバムでは、マドラス・チェンバー・オーケストラなんて大層な連中まで担ぎ出しての一大スペクタクル。何かしら過剰な演出とでもいうべきものがないと、音楽として聞くのはつらいんですよね。素朴だというだけでは商品として成立しないと思うんです、私は。このアルバムはなかなかです。気持ちいいです。


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