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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

TONY ALESS and his LONG ISLAND SUITE

1955年録音 ROOST原盤

これぞジャズの喜びときたもんだ

 うちの親父は西陣織の帯の図案家で、家で仕事をしていました。その仕事場で、映画音楽とかムード音楽のレコードがよく流れていたのです。これは一緒に仕事をしていた叔母の趣味だった(親父は落語を流していた。ちなみに、枝雀の「代書屋」を初めて聞いたのも仕事場だった。いろいろ聞いたけど、あれに勝るものはないね)のだけれど、これに馴染んでいたのが私のインストもの好きの始まり。で、ムード音楽全集の中には必ずグレン・ミラー(「ムーンライト・セレナーデ」と「イン・ザ・ムード」)が入っていて、これが私のジャズ好きのルーツ。入り口がムード音楽だったもんだから、やれソロがどうのなんて聞き方ができるわけもなく、邪道ファンになってしまったのもむべなるかな。

 さて、このアルバムは、ピアニストのトニー・アレスが率いる10人編成のビッグ・コンボ。トニー・アレスなんて初めて聞く名前だけれど、参加メンバーもなんだかなぁって感じで、ニック・トラヴィス(tp)、デイヴ・シルドクラウト(as)、セルダン・パウエル(ts)、ピート・モンデーロ(bs)、ビリー・バウアー(g)、アーノルド・フィスキン(b)、ドン・ラモンド(ds)ということで、見たことがあるような名前はパウエルとバウアーだけ(でも聞いた覚えはない)。でも、契約の関係で変名になっているけれど、トロンボーンで参加しているのは、J.J.ジョンソンとカイ・ウィンディングの名コンビ。さすがにこの二人の名前は知ってますよ。アルバムを聞いたこともありますよ。『ジェイ&カイ』『K+J.J.』なんて双頭リーダーもので人気があるけれど、私はあんまり好きじゃない。トロンボーン独特のもっさりした感じがなくて、あまりにも流麗に吹きすぎている感じがするのね。上手に吹いてるのにイマイチなんて言われる不幸な人たち。やっぱりトロンボーンはモダン・ジャズより古い時代のイメージにこそピッタリの楽器だと思う。「よしもと新喜劇」のオープニングテーマ(なんばグランド花月の舞台で、「シマヤだしの素」でお馴染みの緞帳が上がる際に流れる曲)でお馴染み、ピィー・ウィー・ハントの「Somebody Stole My Gal」みたいにね。そう言えば、グレン・ミラーもトロンボーン奏者だ。やっぱり古い方がいいのかな。とか言いながら、『ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット』(1969年録音)も好きだったりするので、あんまり大層なことは言えませんな。

 で、このアルバムでは全曲トニー・アレスの作曲&編曲による古き良きスイングが展開されているわけで、トロンボーンもぶふぉぶふぉ鳴ってて見事にマッチ。各人のソロが云々なんて難しいこと考えなくても、リズムに乗ってりゃ万事OK!さすがスイングジャーナルで「幻の名盤」認定されただけのことはありますな。組曲というタイトルなので、全編通して聞かなきゃいけないのかとか面倒臭そうなことを考えがちですが、そんなことは全然なく、しかも1曲当たり3~5分というシングルサイズなのも聞きやすく、とにかく聞いてみなさいったら、騙されたと思って。それにしても、つくづく私はモダン・ジャズには向いてないのかなぁ、やっぱり心の故郷はスイング・ジャズだなぁと再認識した一枚であります。


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