本文へスキップ

ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

SOM AMBIENTE

SOM AMBIENTE  1972年

ブラジルとイタリア、奇跡の融合

 私は春が嫌いです。こういう言い方をすると、伊武雅刀の「子供達を責めないで」を思い出しますね。まぁ、そんなことはドーデモいいんですが、とにかく春は眠いし体はだるいし頭は重いし梨は食えないし花粉は飛んでくるし、ろくなことがない季節です。「新しい出会いに期待に胸を膨らませる春!」なんて感覚は、保守派の私には理解できない。というわけで、3月生まれなのに春が嫌いな私なのです。クソ暑い夏よりは幾分マシですけどね。

 しかし、このアルバムでイメージできる実に爽やかで、うららかな春なら一年間ずっと続いていてもいいですね。実に何とも気持ちいい。うっとり陶然と眠りに就いてしまいそう(←どっちみち寝るんかい)。ブラジリアン・ラウンジ・ボッサ・ソフトロックの大傑作なんて言われてますけど、「ブラジルの春」って、こんな感じなのかしら。そんなこと言うと、ボリス・ヴィアンの『北京の秋』を連想しますね。『北京の秋』ってのは、前衛作家だからか、内容とはまったく関係ないタイトルを付けてみたらしいですね。あ、ちょっとインテリなこと申しました。そうそう、千昌夫の『北国の春』ってのもありましたね。ちなみに襟裳の春は何もないそうです。

 さて、このアルバムは、カクテル・インスト・ プロジェクト「ソン・アンビエンチ」の作品で、「アンビエント・サウンド」という意味らしいですが、陰気で意識の深いところに沈み込んでいくような、いわゆるアンビエントとは全然違い、オルガン、エレピ、スキャット、ハミングを駆使した軽やかな演奏です。演奏しているのは、ブラジルはリオ・デ・ジャネイロ出身のジョゼ・ロベルト・ベルトラミ(キーボード)、アレッサンドロ・マレイロス(ベース)、イヴァン・コンチ(ドラム)の3人組アジムス(ポルトガル語読みすると「アジムチ」)のメンバー。1960年代後半から活動している老舗ジャズ・ファンク~フュージョングループです。プロデュースはドリヴァル・フェレイラ(ギター)。

 しかも、演奏されるのがバート・バカラック「遥かなる影」、ヘンリー・マンシーニ「酒とバラの日々」、ニーノ・ロータ「ゴッドファーザー愛のテーマ」、ジョニー・マンデル「いそしぎ」をはじめ、ミシェル・ルグランやフランシス・レイといった錚々たる面子の名曲という、さすが分かってらっしゃる、な選曲。ブラジルとイタリアのいいところが合体していて、サントラ好きでラウンジ好きのマストアイテム『ムジカ・ロコムンド~ブラジリアン・ミュージック・ディスク・ガイド』にもバッチリ掲載されています。飛びついて買って損はなし、これを聞いて気持ちよくならない人は一度医者に行った方がいいレベルの大名盤です。あんまり大音量でガンガンかけるんじゃなく、静かに、部屋の中をたゆたうように流しておきましょう。年がら年中流していても、まったく飽きることがありません。素晴らしい生活空間を提供してくれること請け合いです。


メニュー

  1. トップページ
  2. 特選名曲
  3. 特選名著
  4. 特選名画
  5. ヴァイブの殿堂
  6. PROFILE
  7. BLOG
  8. BBS
  9. LINK

おすすめ情報