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ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

LINDA & THE BIG KING JIVE DADDIES

2003年発売

豹柄パンストのナニワのおばちゃんではありません

 ボーカルのリンダちゃんの蓮っ葉かつ下品な歌声が諸兄の股間を直撃するノリノリの一枚。1998年に名古屋で結成、アメリカに渡ってSLIMSTYLE RECORDSというインディーズ・レーベルから発売したCDの売上枚数が3万枚を超えたという伝説のネオスイング・バンド。この「名古屋で結成」というあたりに、得も言われぬ濃さやパワーを感じるのは私だけだろうか。ザ・ヴィーナスのコニーとか尾藤イサオのロカビリー・スタイルみたいに色物として成立するのならともかく、こういう音楽を日本人がやると、大抵薄ら寒く残念な感じが漂うものなのだが、名古屋というオシャレ的には逆境な土地でデビューするからにはよほどの覚悟があったに違いない。まぁ、西成区出身でモデルをやろうというのよりは数段ましな気はするが。

 ちなみに、ネオスイングというのは、スイングジャズを違う音楽と融合させて、ポップで現代的に変化させた音楽のこと。タイトルになっているジャイヴというのは、スイングジャズやジャンプブルース(1940年代に流行した、管楽器のアンサンブルを加えたリズミカルなブルース音楽の一形態。ジャズの影響が大きく、また、以後のリズム&ブルースに影響を与えた)などにおいて、軽快でウイットに富んだもののこと。といったような薀蓄はどうでもよく、とにかく聞けば自動的に細胞が振動を開始する肉感音楽の決定版。いささか勢いだけという感じもしないではなく、もう少しアレンジに工夫があればもっと楽しめると思うのだが、バンドなのだから、こんな具合でちょうどいいのかも知れません。

 ボーカル入りのアルバムにアンテナなんか張っていない私なのだけれど、実はヴィレッジヴァンガードをうろついていたらスマイリー加藤の素晴らしいジャケットワークが目に飛び込んできたので即購入したのである。このいかにもキッチュで安物っぽくていかがわしい雰囲気をまとったジャケットが、コカコーラとドーナツなイメージを必要以上に強調していて素晴らしい。収録曲もナット・キング・コールの「ルート66」、ローズマリー・クルーニー(そして江利チエミ)の「カモナ・マイ・ハウス」、デューク・エリントン作曲の「I’m Beginning To See The Light」などのカバーがてんこ盛りで、これまたテールがピンと尖ったフォード・フェアレーン・ギャラクシー(色はピンク!)でパラシュートスカートなイメージを醸し出し、気分は否が応でもギブミー・チョコレート、古き良きアメリカなのです。このトータルコーディネイトにも程がある販売戦略の直撃を食らった人たちは夜な夜な腰を振り振り聞き入るのでありました。

 残念ながらリンダちゃんがアメリカに行っちゃってバンドは解散(他のメンバーはサラリーマンをやっているらしい)、これは彼らが残した唯一のアルバムの再発盤なのだが、未収録音源の入ったオムニバス『JUMP AROUND THE WEST COAST』や、リンダちゃんひとりの『ROCKIN' GOLDIES SHOW』『SWEET DEVIL』とアルバムを発表しているので、ハマった方は追いかけてみましょう。


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